スウェーデン 福祉大国の深層 続報!

『スウェーデン 福祉大国の深層』を水曜社より商業出版(政府刊行物)して頂けました。読者の方からの要望を頂きスウェーデンの時事ニュースを主な内容とし、日本にも役立ち社会貢献にもつながるようなブログを記させて頂きます。

スウェーデン「コロナ: 高齢者コロナ戦略失敗と正式報告 (政府任命 コロナ委員会報告書より)

https://images.unsplash.com/photo-1597839901068-58fa57b3883a?ixid=MnwxMjA3fDB8MHxzZWFyY2h8MTF8fGNvcm9uYSUyMGdpcmx8ZW58MHx8MHx8&ixlib=rb-1.2.1&auto=format&fit=crop&w=500&q=60

スウェーデンの集団免疫戦略への報道

2020年12月18日スウェーデン国王スウェーデンコロナ対策は失敗であったという発言が世界中で報じられ、スウェーデンの独自コロナ対策が失敗したと印象が残ったのではないでしょうか。

 

しかし実はその国王の発言の前にすでに政府が発足したコロナ委員会スウェーデン高齢者コロナ戦略は失敗であったという正式報告が出されていました。

 

ただ日本でコロナ委員会の正式報告をご存じの人は少ないのではないでしょうか?

 

そのコロナ委員会の正式報告を記す前に、まずこれまでのスウェーデンのコロナ事情の経緯を先にご紹介します。

 

 

現在(9/17時点)、スウェーデンでは成人16歳以上の74.1%以上が2回目のワクチン接種をし、ワクチンの普及により一日のコロナ感染拡大は第1波2020年4月5月頃、第2波12月頃と比べると大きく減少しています。そのため9月29日からスウェーデン政府は大幅な規制解除を行うことと発表しています。

 

ただコロナ感染が始まった2020年初頭、スウェーデンが多くの国とは違う独自のコロナ集団免疫戦略を目指すというニュースが世界および日本で報じられました。

 

2020年5月1日のアメリカ合衆国の週刊誌ニューズウィークにも、

新型コロナウイルスの感染拡大に対するスウェーデン独自の対策は、ウイルスにさらされる人の数を増やすことで「集団免疫」を形成し、感染拡大の第2波を防ぐという作戦の一環だとされている。

と記されています。

 

ニューズウィーク日本版『「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に』2020年5月1日

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93307.php

 

 

こうした報道によりスウェーデンは集団免疫戦略をとっていたと一般的には理解されているはずです。しかし実際にはスウェーデン公衆衛生庁集団免疫戦略をとっているとはハッキリとは発言していません

 

2020年5月14日の新聞アフトンブラデットによれば、

スウェーデン公衆衛生庁スウェーデンの戦略が集団免疫戦略ではないと繰り返し述べているにもかかわらず、研究者たちはここ数週間で調子が変わったと考えている。

木曜日(2020/5/14)に行われた公衆衛生庁の毎日の記者会見で、実験室のウィルス監視責任者サラ・バイフォース氏は、スウェーデンの戦略は、感染拡大を遅らせる代わりとはならない集団免疫を実現することではなかったと述べています。

集団免疫は私たちが目指しているものではありませんが、感染した人が多ければ多いほど、免疫獲得を広められるのは事実です。

と記されており、当初公衆衛生庁は集団免疫獲得戦略ではないと否定しているもののハッキリとは否定しておらず、ただいつの間にか集団免疫獲得戦略をとっているような発言をしています。

 

ただスウェーデン公衆衛生庁は集団免疫戦略をとっているような発言はしつつも、公式には集団免疫戦略を取っているとは断言していないのです。

 

www.aftonbladet.se

 

こうしたスウェーデン公衆衛生庁の発言は、スウェーデン国民性を知らないとなかなか理解しにくいです。というのはスウェーデンでは日常的にハッキリしない発言がしばしばあります。

そして後日の状況により発言を変えられるような、曖昧な言い方をすることがあるのです。(詳しくはスウェーデン 福祉大国の深層 に記しています)

 

そのためスウェーデン流の対話手法を知らないと、あたかもスウェーデンが集団免疫戦略をとっていると他国は考えてしまうのです。

 

 

高齢者施設における多くの高齢者の死亡

集団免疫戦略にしろ、そうでないにしろ他国とは異なる独自のコロナ対策をとっていたスウェーデンでは、現実として高齢者施設での感染が拡大し多くの高齢者が死亡しました。

 

2020年7月6日の毎日新聞では、

介護施設の高齢者が犠牲に

 

 感染から回復して免疫を持つ人が一定割合を超えると、その後の感染拡大は自然に封じられる。これが「集団免疫」だ。同国のストックホルム大学の試算では、新型コロナウイルスの場合、この水準に達するのは40%だというのだが、スウェーデン当局はその獲得を目指す戦略を取り、他の欧州諸国が行ったような厳格なロックダウンは実施してこなかった。

 人口1000万人のスウェーデンで、新型コロナの死者数は5000人を超え、人口100万人当たり522人という水準は日本の68倍世界7位だ。英国やスペイン、イタリアは、ロックダウンをしていたのにそれより多いが、隣国のデンマークが104人、フィンランドが59人、ノルウェーが46人だから、北欧の中では死者数の水準は突出してしまった。

 それでも“医療崩壊”のニュースは聞かれない。だが死者の半数以上は介護施設入居の高齢者とのことで、高齢者は集中治療室に入れてもらえないとの批判も出ている。しかし、現地在住経験の長かった日本人に聞くと、同国には「年寄りは先に死ぬもの」と割り切って考える人が多く

と報じています。

 

mainichi.jp

 

また2020年12月13日のTBS News によれば、7,300人のうち9割近くが高齢者の死亡であたと報じられています。

 

 

下記に高齢者施設で叔父を亡くしたスウェーデン人女性ジュリアナさんへのインタビューが収録されています。

是非視聴して下さい(TBS News 2020年12月13日)

www.youtube.com

 

上記のTBSのインタビューの中で、叔父を亡くしたスウェーデン人女性が、

医師は持病のある高齢の感染者は病院で治療を受けられないことになっている
叔父が亡くなった時私は何時間も泣いて眠れませんでした。
でも次の日「コロナだけのせいじゃないと」と直感したんです。

と語っています。

 

この事実は2020年4月23日のスウェーデン共テレビSVTにも記されています

 

SVTの記事によると、ストックホルムの病院では、慢性閉塞性肺疾患BMIが40以上の人、中毒患者、ペースメーカー利用者など、1つまたは複数の深刻な全身性疾患のある患者には、集中治療室での治療を施すべきではないというガイドラインがあると記されています。

またガイドラインでは80歳以上の高齢者集中治療室には送らないと記されてもいるのです。

 

このガイドラインによりスウェーデン人女性ジュリアナさんの高齢である叔父さんは亡くなったのです。

 

www.svt.se

kon-51.hatenablog.com

 

TBSのインタビューの中で、叔父を亡くしたスウェーデン人女性ジュリアナさんは、

全てが普段どおりでした
コロナなどないかのように職員はマスクも手袋もしていませんでした
でも叔父は生贄にされたんだと確信しています

施設が緩和ケアをした理由はわかりません

最も腹立たしいのは政府は承知の上で高齢者を犠牲にしていること
私の叔父だけでなく多くの高齢者が同じように扱われているんです

と語っています。

 

私自身もこの時期に近くの高齢者施設を外から見ましたが、職員や面会の人の誰もマスクをしておらず普段どうりであるかのようにみえました。

 

 

高齢者コロナ戦略は失敗と政府コロナ委員会レポートによる結論

2020年初頭に世界的にも独自コロナ政策をとっていたスウェーデンでは、3月15日にロベーン首相は演説の中、政府の責任は語らないもののコロナ感染防止は国民一人ひとりの責任であると述べていました。その結果コロナ対策は公衆衛生庁が主導で行われ、高齢者施設での多くの高齢者が死亡したのでした。

 

この頃日本でもスウェーデンの集団免疫戦略がどうなるのか注目にもなりました。

 

そして2021年12月17日に国王カール16世グスタフ陛下スウェーデンコロナ対策は失敗との発言により、世界や日本でもスウェーデンコロナ対策は失敗であったという印象をうけたのです。

 

www.bbc.com

 

しかし実は国王のコロナ対策失敗発言前にすでに、4月25日与党・社会民主党レナ・ハレングレン社会大臣が、高齢者介護施設における感染拡大は「間違いなく大きな失敗だと述べていたことは日本ではあまり知られていません。

 

また5月7日ロベーン首相スウェーデン高齢者に対するコロナ対策が失敗であったと述べているのです。 

 

その後スウェーデン政府は6月30日にコロナ委員会を発足し、コロナ対策に対する調査が行われることになります。

 

www.aftonbladet.se

www.svt.se

 

その後2020年11月~12月にかけ、スウェーデンではコロナ感染第2波が襲い、同年4月の第1波以上の死者数となります。

 

2020年12月8日のウォール・ストリート・ジャーナルでは、

晩秋の新規感染者の急増で入院者や死者が増加し、国民の自主的な措置でコロナ流行に対抗するという、欧米では特異な取り組みをスウェーデン政府は断念した。

数週間後、コロナによる類件死者数は人口100万人当たり約700人に到達。感染者が指数関数的に増加し、病床が満杯になる中、政府は方針転換を決定した。

と報じています。

 

jp.wsj.com

 

こうした状況を受けスウェーデンコロナ委員会12月15日スウェーデン高齢者に対するコロナ戦略は失敗であったと正式発表したのでした。

 

2020年12月15日の公共テレビSVTによれば、

今年の夏に政府によって任命されたコロナ委員会は、現在、報告書で中間報告書を提出しました。マッツ・メリン委員会委員長は火曜日の午後の司祭会議でこの報告についてコメントし、高齢者介護の努力が遅すぎ、多くの場合対策が不十分であったと語りました。

 

今のところ、すでに高齢者保護というスウェーデン戦略の一部が失敗したと言えます。そうでなければ、多くの人がコロナ感染で死亡したとは考えられません

とマッツ・メリン委員会委員長は述べています。

 

多くの高齢者が介護施設で亡くなった主な理由として、パンデミック以前からの構造上の問題が指摘されています。これらは、国の作戦がパンデミックに対処する準備ができていなかったことを意味しました。

責任は当局、地方自治体、民間請負業者によって共有されますが、最終的な責任があるのは政府と前政府であるとコロナ委員会の委員長は語っています。

政府は国家を統治しているため、最終的な責任は(高齢者施設での)脆弱性を認識していた現政府と以前の政府にあります。

マッツ・メリン氏によると、政府は、高齢者介護施設ではパンデミックに備える対策を講じるべきだったとのことです。

 

www.svt.se

 

 政府コロナ委員会の発表した原文(スウェーデン語)

Delbetänkande av Coronakommissionen『Äldreomsorgen under pandemin』Stockholm 2020,Statens Offentliga Utredningar SOU 2020:80

https://coronakommissionen.com/wp-content/uploads/2020/12/sou_2020_80_aldreomsorgen-under-pandemin_webb.pdf

 

政府コロナ委員会の発表した原文(英語)

Delbetänkande av Coronakommissionen『The elderly care in the pandemic Summary in English(2020-12-15)』

https://coronakommissionen.com/wp-content/uploads/2020/12/summary.pdf

 

 

こうしてこれまで無防備コロナ対策とも呼ばれたスウェーデン公衆衛生庁主導のコロナ対策か政府主導コロナ対策に切り替わり12月24日から政府主導による他国に近い規制が実施されることになったのでした。

 

これまで公衆衛生庁はマスク使用は非推奨でしたが、この後に政府主導対策によりマスク使用も推奨されるようになります。

 

ちなみにスウェーデン 福祉大国の深層は、2020年1月のコロナ発生以前に原稿を仕上げ、コロナ発生以前から高齢者施設の脆弱性についてすでに記していますたまたまそれにコロナが発生し、コロナ記事を追加したものとなっております。この事からもスウェーデンではコロナ発生以前から高齢者施設の脆弱性が問題であったことがわかるはずです。

 

 

コロナ以前からの高齢者施設の脆弱性

このようにスウェーデンではコロナ発生以前から高齢者施設の脆弱性が長い間問題となっていました。

 

2011年にはカレマスキャンダルと呼ばれる、スウェーデンの社会に衝撃を走らせた事件が起きています。このスキャンダルは国内大手の高齢者介護施設カレマによるずさんな実態が表面化し不祥事が発覚したものです。

(詳しくはスウェーデン 福祉大国の深層 をお読みください)

 

kon-51.hatenablog.com

 

高齢者施設の脆弱性は1992年に施工されたエーテル改革に端を発します。エーテル改革により民間が参入し競争が促され、民営化された介護者施設はコスト重視となり、コスト削減によりサービスや介護の質の低下、高齢者施設内での犯罪発生など多くの問題を生んでしまったのでした。

 

2020年5月10日の新聞DIにも、ストックホルム大学の高齢者政策専攻のマルタ・セベヒーリー名誉教授は、コロナにより多くの高齢者が死亡した理由として、 長年にわたり高齢者施設での人員削減が行われ、政治的に高齢者福祉が軽視されてきたためだと語っています。

 

kon-51.hatenablog.com

 

 

このように高齢者介護施設における脆弱性は長年大きな問題でした。しかし政府は高齢者施設の脆弱性を把握しつつも、コロナ感染拡大の中に具体的な高齢者対策を行わなかったため多くの高齢者が死亡したのです。そのためコロナ委員会高齢者コロナ対策は失敗であり、その最終的な責任現政府と前政府にあると結論づけたのでした。

 

 

日本でスウェーデン政府の正式発表が報道されていない理由

ただ日本では、コロナ以前から高齢者施設に脆弱性があったこと、また2020年4月5月時点でにすでにレナ・ハレングレン社会大臣ロベーン首相高齢者コロナ対策は失敗と発言していたこと、2020年12月15日にコロナ委員会高齢者コロナ戦略は失敗であると正式報告していたことを知る人は少ないはずです。また日本ではこうした報道もあまりされていないのではないでしょうか。

 

恐らく多くの日本人が知っているのはスウェーデン一部の情報のみなのではないでしょうか?

 

 

下記にスウェーデン主なコロナ事象を時系列化したのでご覧ください。

 

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しかし日本の主要メディアでは下記のような報道が主にされたのではないでしょうか。

 

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こうした一般的に日本で報道される情報だけを聞くと、あたかもスウェーデン公衆衛生庁主導の集団免疫戦略(正式にはそう発言していません)は途中失敗だったが、現在も日本ではいま規制解除ができない中スウェーデンではロックダウンもマスクも推奨せず感染者数が減り、最終的に集団免疫戦略は成功し9月29日からの規制緩和につながりたようも見えてしまいます。

(またスウェーデンのロックダウンしないことが日本では話題となりましたが、実際には隣国フィンランドも一部地域封鎖が短期間あったものの、フランスのようなロックダウンはしていません

 

 

しかし実際には2020年4月5月時点でハレングレン社会大臣ロベーン首相はすでに高齢者対策は失敗であると発言しており、12月15日に政府のコロナ委員会高齢者政策は失敗でありその最終責任は政府にあると正式報告をだしているのです。

 

その後、スウェーデン政府主導による他国に近い規制を設けるコロナ対策に切り替わりマスク使用も推奨されワクチンの普及日本よりも進み大幅に感染者数が減ったことで、9月29日からの大幅な規制緩和に踏み切ることとなったのです。

 

 

ではなぜ日本ではスウェーデンの実情に関し、切り取られたような報道となるのでしょう?

 

1つ目の理由:日本:国際報道数が少ない

1つ目の理由として、日本の主なメディアでは欧米メディアと比べ国際報道数が少ないため海外支局が主要国にしかない事に起因していると考えられます。

 

日本のメディアは国内報道数は多いものの、国際報道数は少ないです。

 

大阪大学を拠点とするメディア研究機関グローバル・ニュース・ビュー(GNV)が調査した三大紙(読売新聞、朝日新聞毎日新聞における国際報道の割合は下記のようになっています。

 

国際報道の割合(記事数) 2017年 (出所GNV)


朝日新聞国内報道数 88.5%国際報道数 10.7%、日本関連の国際報道数 0.7%
毎日新聞国内報道数 88.9%国際報道数 10.3%、日本関連の国際報道数 0.9%
読売新聞:国内報道数 87.8%国際報道数 11.1%、日本関連の国際報道数 1.0%

 

globalnewsview.org

 

また5月23日の東洋経済には、GNV創設者、大阪大学大学院 国際公共政策研究科 ホーキンス教授の記事が掲載されています。

 

「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志

データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点

--GNVでの活動や研究を通して、ホーキンス先生は「日本の国際報道には2つの問題点がある」と主張しています。具体的には、どういうことなのでしょうか。

 

量が乏しすぎる。そして、中身が偏りすぎている。この2点です。もちろん、外国の国際報道にも同様の傾向はあります。測り方の問題があるので簡単に比較はできないですが、アメリのテレビ報道では国際ニュース15~20%くらいです。日本の新聞は、ニュース全体の10%前後ですね。

これとは別に、以前、私が手掛けた調査では、欧米の国際報道でアフリカのニュースが占める割合は6~9%でした。これに対し、日本の新聞では2~3%です。

日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい。とはいえ。欧米の国際報道も決してモデルにすべきようなものではありません。

ナショナリズムと自国中心主義の影響が大きい

日本の国際報道が偏りすぎている原因については、ナショナリズム自国中心主義の影響が大きいと言えます。例えば、事故やテロがあれば、日本のメディアは「被害者に日本人がいるか」「その出来事と日本人にはどんな関わりがあるのか」といった点にばかり、まず目を向けます。

その次に来るのは、欧米メディアの目線です。日本の国際報道は、欧米メディアの報道を追いかけている。したがって、アメリカが着目するニュースに日本も着目します。アフリカの出来事を報道するにしても、しばしば、ニューヨークやワシントンから「アフリカのこの問題について、アメリカ当局はこういう見解を示している」といった伝え方をしています。

 

toyokeizai.net

 

こうした大阪大学院ホーキンス教授の発言から、日本の報道は国内数は多いものの、国際報道数は欧米のメディアと比較するとがかなり少なく、偏っている記事もあることがわかります。

 

国際報道の記事数が少ないという事は、主要国にしか海外支局がなく国際報道担当記者数も少ないという事になります。

 

日本の主要メディアの海外支局一覧

 

朝日新聞

アメリカ総局(ワシントン) ニューヨーク支局、サンフランシスコ支局、サンパウロ支局、ハバナ支局 ヨーロッパ総局(ロンドン) パリ支局、ベルリン支局、ブリュッセル支局、ジュネーブ支局、ローマ支局、ウィーン支局、モスクワ支局 中東アフリカ総局(カイロ) エルサレム支局、ヨハネスブルク支局、テヘラン支局、バクダッド支局、ドバイ支局、イスタンブール支局 アジア総局(バンコクシンガポール支局、ジャカルタ支局、ニューデリー支局、ハノイ支局、ヤンゴン支局、シドニー支局 中国総局(北京) 上海支局、瀋陽支局、広州支局、台北支局、香港支局、ソウル支局

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毎日新聞

北米総局(ワシントン)、ニューヨーク支局、ロサンゼルス支局、メキシコ支局、ソウル支局、中国総局(北京)、上海支局、台北支局、マニラ支局、ジャカルタ支局、ニューデリー支局、エルサレム支局、テヘラン支局、欧州総局(ロンドン)、ローマ支局、パリ支局、ウィーン支局、ベルリン支局、ジュネーブ支局、ブリュッセル支局、モスクワ支局、カイロ支局、ヨハネスブルク支局、通信員(トロントカトマンズ

 

読売新聞

ロンドン(欧州総局)、パリ支局、ブリュッセル支局、ジュネーブ支局、ベルリン支局、フランクフルト支局、ローマ支局、ウィーン支局、モスクワ支局、プラハ支局、アテネ支局、ワシントン(アメリカ総局)ニューヨーク支局、ロサンゼルス支局、メキシコ支局、ハバナ支局、リオデジャネイロ支局、北京(中国総局)上海支局、瀋陽支局、香港支局、台北支局、ソウル支局、バンコク(アジア総局)マニラ支局、シンガポール支局、ジャカルタ支局、シドニー支局、ニューデリー支局、イスラマバード支局、カイロ支局、エルサレム支局、テヘラン支局、イスタンブール支局、ヨハネスブルク支局

 

NHK

アジア総局、マニラ支 局、ジャカルタ支 局、ハノイ支 局、クアラルンプール支局、ニューデリー支局、イスラマバード支局、シンガポール支局、シドニー支局、ソウル支局、中国総局、上海支局、広州支局、台北支局、ヨーロッパ総局、ロンドン支局、ブリュッセル支局、ベルリン支局、ウィーン支局、モスクワ支局、カイロ支局、ドバイ支局、エルサレム支局、テヘラン支局、ウラジオストク支局、アメリカ総局、ワシントン支局、ロサンゼルス支局、サンパウロ支局

 

日本テレビ
ロンドン支局、パリ支局、モスクワ支局、カイロ支局、中国総局、上海支局、ソウル支局、バンコク支局、ニューヨーク支局、ワシントン支局、ロサンゼルス支局

 

TBS

ニューヨーク支局、ワシントンDC支局、ロサンゼルス支局、パリ支局、ロンドン支局、ベルリン支局、ウイーン支局、モスクワ支局、カイロ支局、北京支局、上海支局、ソウル支局、バンコク支局   

 

朝日テレビ

アメリカ総局、ニューヨーク支局、ワシントン支局、ロンドン支局、パリ支局(ABC)、モスクワ支局、カイロ支局、バンコク支局、中国総局(北京)、ソウル支局 上海支局(ABC)

 

東京テレビ

ニューヨーク・ワシントン・ロンドン、モスクワ・ソウル・北京・上海

 

 

上記の主要メディアの海外支局一覧からもわかるように、日本の主要メディアにはスウェーデン支局が1つもありません。その理由としてアメリカやイギリス、フランスなど大国には支局があるものの、人口1,023万人しかいない小国であり、政治的にも繋がりが少ないスウェーデンに支局がないと考えられます。

 

その為スウェーデンの報道は近隣のロンドン支局やパリ支局が対応すると考えられます。ただスウェーデン支局がなく他国の支局が対応すると、スウェーデン語という言語障壁地理的問題により情報は限られてしまいます

 

そこで報道記者ではない一部の現地日本人からの情報にも頼ることにもなり、日本で報道されるスウェーデン事情には個人的主観も含まれた報道になりやすいと考えられるのです。コロナ期で移動制限がかかる中ではなおさらであります。

 

このように日本で報じられるスウェーデンの報道にはフィルタリングがかかり、スウェーデン国内や欧米諸国で報じられる一般的なスウェーデン情報(良い面、悪い面とも)でさえも日本には伝わらず一部のフィルタリングされた情報のみが日本では報じられていると考えられます。

 

しかし欧米のメディア(BBC、ロイター、ニューズウィーク、または隣国フィンランドなど)では、地理的問題や語学障壁も少なく、比較的スウェーデン国内に近い記事や、さらに追求した記事も報じられています。

 

 

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もちろん日本人でも英語や他言語が堪能であり欧米メディアにも目を通せる方は問題ないのですが、一般の日本人は現在も英語が苦手である人も多いため、なかなか海外の主要メディアの国際報道に目を通すことは難しいです。

 

その為多くの日本人は日本のメディアからの国際報道に頼りスウェーデンの実情に関しても一部の情報しか知ることができないのです。

 

 

またスウェーデン 福祉大国の深層 を読まれた方はわかるかもしれませんが、本書の内容は多くの日本人にとって意外なスウェーデンの側面が記されているかもしれません。

しかし本書は基本的としてスウェーデンの報道記事で構成しており、スウェーデン国内では一般的に報じられている内容が多くあります。

ただ一般的な日本メディアでの報道内容とは異なるため、多くの日本人がもつスウェーデンイメージと違うのです。

 

スリード報道

またこうした日本の報道は、以前記した「ミスリード報道⁉ 日本の再犯者率と北欧の再犯率」の内容ともつながるものがあります。

 

内容は日本では日本の再犯者率北欧の再犯率比較することがあり、あたかも日本の再犯率は高く北欧の再犯率は低い錯覚してしまう理由を記したものです。

ただ実際には日本の再犯者率と北欧の再犯率では定義が全く違うので比較はできません

 

kon-51.hatenablog.com

 

その中で記した2016年11月15日のヤフー ニュースには、再犯者率、過去最高」のカラク犯罪白書でミスリード報道相次ぐ』という見出しの記事があり、次のように記されています。

 

その意味を十分理解せずに「過去最高」と大きく報道し、スリードしているケースも少なくない

実態を表している「生のデータ」自ら分析するのではなく法務省法務総合研究所)が行った比較分析などの「分析結果」を検証するのでもなく、そのまま借用して「事態の悪化」を印象づける報道がみられた。

こうした「犯罪白書」報道から見て取れるのは、メディアの「発表」依存と「悪いニュース」志向という病理である。

 

こうした理由から日本でのスウェーデンに関する報道内容も、発表(提供)された一部の情報をもとにメディア自らの分析があまりなく記事が構成され、メディアによりフィルタリングされ切り抜かれた一部の報道しか一般の日本人は得ていないと考えられるのです。

 

news.yahoo.co.jp

 

2つ目の理由:日本:ノーベル賞への多額投資

2つ目の理由として、日本ではノーベル賞獲得に多額の資金投資をしていることが考えられます。

 

技術大国日本にとってノーベル賞獲得は日本の技術力を世界に示すために大きな役割を担っています。そのためノーベル賞の威厳を保つためにもスウェーデンが良いイメージを保つことが重要となってきます。

 

そのためスウェーデンメージが崩れるような報道ノーベル賞の威厳存続にも繋がり、ノーベル賞獲得のために多額投資する日本にとってもマイナスにつながる可能性も出てきます。

 

その為日本ではスウェーデンにマイナスになる報道はあまりされないと考えられます。

 

ちなみに日本で毎年大きく報道されるノーベル賞受賞式ですが、一般のスウェーデン人の間ではあまりノーベル賞について騒いでいません

 

また多くのノーベル賞受賞者を輩出するアメリカでも一般のアメリカ人はあまりノーベル賞受賞を騒がないそうです。2016年にアメリカのミュージシャン ボブ・ディランノーベル文学賞事務局の連絡を無視し続けてきたことは大きなニュースでした。

 

 

3つ目の理由:スウェーデン:産業界の影響力

3つ目の理由としてスウェーデン産業界の影響力により、スウェーデン経済に影響を及ぼすようなマイナスのイメージ報道が日本でされずらいとも考えられます。

 

日本ではほとんど知られていませんが、スウェーデンでは一部の大財閥(家族)ストックホルム証券所の時価総額70%を保有しています。またこうした財閥(家族)は現政府である社会民主党との結び付きが強くあります。

 

このスウェーデンの財閥の中の最大財閥(家族)は世界的にもネットワークがあり日本にも支局があります。またこの財団(家族)の1人は、2019年にスウェーデン日本国大使から両国の経済関係強化と友好親善に寄与した功績として旭日重光章が授けられました。そのためこの財団(家族)が日本経済とのつながりがないとはいえないのです。

 

またスウェーデンの最大財閥(家族)は大学・研究機関にも多額な助成金をだし、さらにノーベル財団へも多額の寄付金をだし強い結びつきをもっています。

 

2つ目の理由で示したように日本でスウェーデンのイメージを壊すような報道がされるとノーベル賞の威厳を損ないかねず、ノーベル賞の威厳が損なうことはスウェーデンの経済や産業界にも大きな影響を与えることになるのです。

 

このためスウェーデン産業界からの影響もあり、日本ではスウェーデンマイナスにとなるような報道はされにくいとも考えられるのです。

 

(ここでスウェーデンの社会構造を細かく全て記せないので、詳しくお知りになりたい方はスウェーデン 福祉大国の深層 をお読みください)

 

kon-51.hatenablog.com

 

結論

こうした3つの理由により、日本におけるスウェーデンの実情に対する報道には、フィルタリングがかかり一部の情報しか一般の日本人は知らされていないと考えられます。

 

その為2020年12月15日にコロナ委員会スウェーデン高齢者コロナ戦略は失敗したという正式発表も、多くの日本人スウェーデン政府の正式見解を知らないのです。また中には集団免疫戦略が継続されており、それが9月29日からの大幅な規制緩和につながったと考える人さえもでてしまうかもしれません。

 

ただ付け加えておくこととして、スウェーデンの実情は日本の一部の専門家には知られており論文や報告書などでは公表されています。

 

しかし一般の日本人はテレビなどの大衆メディアからの情報が大半であるため、フィルタリングされた一部の報道で、現在のスウェーデンに対する固定的なイメージが作りあげられていると考えられるのです。

 

またもう少し深く追求すると、これはスウェーデンに対する固定的なイメージに限ったことではなくなく

多くの日本人が憧れを抱く西欧諸国のイメージも作り上げているのでははないでしょうか?

 

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