
4月4日にNATOはフィンランドがNATOに加盟すると表明を行いました。
しかしスウェーデンはフィンランドとNATOへの同時加盟を公表していたものの、いまだにトルコやハンガリーからNATO加盟承認が得られておらず、加盟は難しい状況が続いています。
それではNATO加盟ができたフィンランドと、
同じ北欧の国でありながらNATO加盟に苦戦するスウェーデンの違いは何なのでしょうか?
その理由は3月31日のBBCニュースにも記されていますが、スウェーデンで起きたコーラン焼却事件での多くのイスラムの国々によるスウェーデン非難や、スウェーデンにいるクルド人支援団体がトルコのエルドアン大統領の人形逆さ釣りにより、トルコ議会から承認が得られないことにあります。
またエルドアン大統領はスウェーデンにクルド人武装組織PKKメンバーは引き渡したものの、ジャーナリストであるビュレント・ケネシュ氏を引き渡していません。
またスウェーデン政府はケネシュ氏以外にトルコ政府がギュレン師の支持者だとして引き渡しを求めている4人の送還を拒んでいます。
こうしたスウェーデンにいる多くのクルド人とトルコでのトルコ人問題とが関連し、スウェーデンのNATO加盟の可否に大きく影響しているのです。
そのスウェーデンには約10万人のクルド人がいます。スウェーデンの人口は約1023万人なので、スウェーデンの総人口の1%もがクルド人で占められています。
そのためスウェーデンにおけるクルド人はマイノリティ(少数派)ではなくなっています。
(ちなみにスウェーデンに在住する日本人は2394人(2010年)とのことですので、総人口における日本人の割合は、0.023%ですので、スウェーデンに住むクルド人の多さがわかると思います)
また現在のスウェーデンはクルド人だけではなく、多くの移民難民で構成される多民族移民国家となっています。
スウェーデンの移民受け入れの歴史は長いですが、特に第2次世界対戦後に増加し多くの移民や難民を受け入れてきました。

スウェーデンでギャング凶悪犯罪の多い本当の理由
そうした現在の移民や難民が多いスウェーデンにおいて多くの問題が起きています。
著書 スウェーデン 福祉大国の深層では詳細を記していますが、スウェーデンの拳銃事件や爆弾事件数はヨーロッパでも非常に高く、連日拳銃事件が起きています。こうした凶悪事件は、主に移民としてやってきた背景のもので構成されているギャングにより引き起こされています。
ギャング問題はスウェーデンにおいて、最重要解決課題であるとスウェーデン政府は発表するまでになっています。
実際のシリア人の難民の話によると、スウェーデンは歴史的に多くの難民を受け入れてきたものの、受け入れ後の政策があまり検討されず難民の受け入れを行ってきました。
そのため、1950年代には多くの難民がきたものの、スウェーデンでは住む家も提供されず、難民が自分で家を探す必要があったどうです。
そのため、難民は以前に難民としてきたものの親族を頼ることになり、自然と市内から遠くはなれた町で、スウェーデン社会とは別に自分達だけのコミュニティーを形成していったそうです。
そうした難民はスウェーデンに不満をもっており、そうした移民難民の多く住む場所でギャングが生まれ、現在の凶悪犯罪の多いスウェーデンをうみ出したのです。
kon-51.hatenablog.com
反面、フィンランドは移民や難民の受け入れには慎重をきしてきました。そのためスウェーデンと比べ移民は少なく、移民による事件もスウェーデンと比べれば非常に少ないです。
実際にフィンランドでは、スウェーデンのようにならないよう、スウェーデンの凶悪事件の多さがニュースでよく反面教師として報道しています。
スウェーデン人は社交的ではあるものの言動がともなわないことがしばしありますが、フィンランド人はあまり口数は少ない国民性ですが慎重であり、有言実行が重視される日本人と似た国民性でもあります。
そうしたフィンランドとスウェーデンの違いはコーラン焼却事件でも現れました。
スウェーデンで起きたコーラン焼却事件では、スウェーデン当局は、「スウェーデンではコーランを燃やすのも自由」とし警察がデモを許可しトルコやイスラム国家の大きな反発を招きNATOに加盟できずにいます。
kon-51.hatenablog.com
またスウェーデン当局は、「スウェーデンには自由」があるとし過激なデモを許可したにも関わらず、
トルコからの非難があった後は当局はデモを拒否しており、先に発言していたこととやっていることが大きく矛盾しているのです。
しかしフィンランドでもコーラン焼却に関係するデモ要求があったのですが、フィンランド当局ではこうした過激なデモは受け入れられないとし、はじめからデモを拒否しました。
そのためフィンランドではコーラン焼却事件が起きずイスラム国家からの反発を招かなかったのです。
北欧というと同じような国と日本人はとらえがちですが、フィンランドとスウェーデンの国民性や考え方は大きく違っています。
そのため教育、医療などの福祉も、法律上の建前の福祉制度だけではなく、
実際の福祉ではフィンランドのほうが充実し実質上も機能しているのです。
こうしたフィンランドとスウェーデンの国民性や考え方、また有言実行を伴う実質の力の違いが、フィンランドはNATO加盟できたものの、同じ北欧国でありながらいまだに加盟できないスウェーデンとの違いを生んでいるのです。