
■ ある日届いた「17,000ユーロ」の手紙
想像してみてください。
ある日、ポストを開けると――
17,000ユーロ(約280万円) の請求書が入っていた。
…あなたならどうしますか?
これは冗談ではありません。
実際に、フィンランド南西部のティュルク(Turku)という街で起きた出来事です。
Hannu Lahti(ハンヌ・ラハティ)さんのもとに届いたのは、母親の介護サービスに関する請求。
その金額はなんと 17,291.89 ユーロ(約300万円)。
しかも、請求されたサービスは何年も前のもの。
ラハティさんは「そんな請求書は一度も届いていない」と困惑しています。
yle.fi
■ どうして今になって請求が?
背景にあるのは、行政のシステム移行トラブルです。
フィンランドでは2023年から、新たに「福祉・保健地域(Varha)」が発足。
それまで市や自治体が行っていた福祉サービスを、広域で一括管理する体制に変わりました。
しかし、この大規模なシステム移行でトラブルが多発。
請求データが届かなかったり、処理が途中で止まったりしていたのです。
その“後始末”として、今になって過去分の請求をまとめて送っているというわけです。
■ 「これは間違いでは?」と感じる人も続出
歯科サービスを利用していた Sari Lähteenmäki(サリ・ラフティーンマキ)さんにも、約1,900ユーロ(約30万円) の請求が届きました。
彼女はすぐに内容を確認しようとしましたが、
「どの治療の分なのか」「なぜ今になってなのか」――説明は不十分。
不安に感じた彼女は、国会オンブズマン(Oikeusasiamies)の苦情提出も検討しているそうです。
■ 行政も「不備はあった」と認める
Varha(ヴァルハ)の財務責任者は、
「請求書が送られていなかった例がある」と公式に認めました。
地域議長の Niina Alho 氏も
「これは重大な問題。システムと管理体制を見直す必要がある」とコメント。
それでも Varha は、
「サービスを提供した以上、支払いを求めるのは公平だ」として、回収を続ける方針を崩していません。
■ ヨーロッパでは“おおらかさ”が裏目に出ることも
拙著『スウェーデン、福祉大国の深層』では記しましたが、私自身、税務署のミスで 8,000ユーロ(約142万円) の“身に覚えのない税金”を請求されたことがあります。
ヨーロッパでは、官庁の仕事が日本に比べると大ざっぱなことが少なくありません。
「人間味がある」と言えば聞こえはいいのですが、こういう時には困りものです。
■ 日本でも他人事ではない
「フィンランドの話でしょ?」と思うかもしれません。
でも、実は日本でも似たようなことが起きる可能性があります。
たとえば──
• 高齢の家族が介護サービスを利用していて、明細をよく確認していない
• 医療費や公共料金の請求が、郵便の遅れで届かない
• 自動引き落としにしているけれど、明細を全く見ていない
こうした小さな“見落とし”が、時間を経て大きな金額トラブルにつながることがあります。
どうぞご注意ください。
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