スウェーデン 福祉大国の深層 続報!

『スウェーデン 福祉大国の深層』を水曜社より商業出版(政府刊行物)して頂けました。読者の方からの要望を頂きスウェーデンの時事ニュースを主な内容とし、日本にも役立ち社会貢献にもつながるようなブログを記させて頂きます。

スウェーデン「養子縁組犯罪:母親同意ない630組以上の国際養子縁組と人身売買の可能性」

https://images.unsplash.com/photo-1488521787991-ed7bbaae773c?ixlib=rb-1.2.1&ixid=MnwxMjA3fDB8MHxwaG90by1wYWdlfHx8fGVufDB8fHx8&auto=format&fit=crop&w=1470&q=80

養子縁組犯罪:母親同意ない630組以上の国際養子縁組

公園や道を歩いているとしばし肌の色の違う親子を見かけることがあります。これはスウェーデンでは日本よりも国際養子縁組が進んでおり、アジアやラテンアメリカ、アフリカなどの子供を養子とする国際養子縁組が多いためです。

 

こうした光景を見るとスウェーデンは貧しい国々の子供たちを受け入れ、人道主義が根付いているように感じます。

 

実際にスウェーデンは国連掲げる17の目標SDGs(持続可能な開発目標)において2020年で1位、2021年では2位と先進的で平等かつ環境に配慮し、人権的な国というイメージが世界で広まっています。

 

しかしそうした国際養子縁組に犯罪が関与していた可能性があるというニュースが報じられました。

 

10月27日のスウェーデン共テレビSVTによれば、スウェーデン政府は、スウェーデンが長年にわたりチリや中国などからどのように国際養子縁組が行われてきたか調査すると、社会大臣のレナ・ハレングレン氏が発表したと報じています。

 

SVTの記事では次のように報じています。

調査開始の経緯としては、スウェーデンでの国際養子縁組について長い間批判があったことにあります。

 

2018年にスウェーデン共テレビSVTは、チリで70年代から80年代母親の同意なしに子供が養子縁組されていた可能性があることをチリのジャーナリストとともに明らかにしました。

 

現在進められている調査は、1970年代から1990年代にかけ、チリ中国またその他の国々から養子縁組としてスウェーデン人の元にやってきた養子縁組に関してです。

 

明日、スウェーデン政府はスウェーデンにおける国際養子縁組活動に関する包括的な調査を任命します。

とハレングレンは水曜日の朝の記者会見で語っています。

 

それは長年にわたり養子縁組の多くがうまくされていなかったという情報の元、2018年以降において630件以上スウェーデン人の元への養子縁組事例を含む犯罪の捜査が現在チリで進行しています。

 

この調査で、間違いがあったかどうかを明らかにし、さまざまな関係者がどのような責任を負っており、こうした不正行為(養子縁組犯罪)が一時的であったのか組織的であったのかを明らかにします、

とハレグレン氏は語っています。

 

新聞ダーゲンズ・ニーヘタによると、チリの軍事政権フンタスウェーデンとの関係を改善を目的に政治的擁護キャンペーンとしてスウェーデンへの養子縁組を利用したと報じています。この養子縁組キャンペーンはストックホルムにあるチリ大使館が管理していたに違いありません。

 

今年の6月、スウェーデン議会はスウェーデン政府にこの養子縁組問題に対処することを要請すると発表しました。

 

将来的に不正防止することが重要であり、調査員はどのような対策を講じるべきかの提案を提出しなければなりません。提案は子どもの最善の利益の法的原則を強化することを目的としています。

とハレグレンは語っています。

 

家族法を専攻とするウプサラ大学の民法教授アンナ・シンガー氏は、政府による調査を主導として任命されています。 そして2023年11月7日までにこの調査を完了する必要があります。

 

スウェーデンで国際養子縁組が多くされていましたが、スウェーデン共テレビSVTの記事により、その背景には政治的な意図もあり犯罪とも関与していた可能性が大きかったことが明らかになりました。

 

www.svt.sehttps://i.guim.co.uk/img/media/fdf6d424cdd86c53cfee738dcc6325861d615471/0_432_4480_5600/master/4480.jpg?width=300&quality=45&auto=format&fit=max&dpr=2&s=0ba123746ee2579cac9767d8e5d04594

 

「生まれたばかりの我が子は盗まれたのです」人身売買の可能性もあり

このスウェーデンの養子縁組問題(犯罪)は日本でも報じられています。

3月28日の講談社の「クーリエ・ジャポンでは下記のような記事が記されています。

私は「盗まれた赤ちゃん」だった─親子を引き離した“嘘だらけの養子縁組”はなぜおこなわれたか

 

チリで生まれ、赤ん坊の頃に養子としてスウェーデンにやってきた1人の女性。大人になって、生みの母に会いたいと思った彼女は、自分が実母のもとから「盗まれた」ことを知る。幼い彼女を母から引き離し、遠い異国の地に追いやったのは誰なのか? その目的とはいったい──。

 

「生まれたばかりの我が子は盗まれたのです」

2002年の冬、ディーマーはあるドキュメンタリー番組について耳にした。その内容は、スウェーデンで養子となった2人の人物が、チリで血のつながった家族を探す過程を追ったものだった。

その少し前、彼女は、チリの国家児童サービスが母親の住所に関する情報を入手したという話を聞いていた。

ディーマーはこの新たな可能性に望みをかけて、チリのジャーナリストでドキュメンタリー番組の製作にも携わった、アナ・マリア・オリバレスに助けを求めた。

ディーマーの実母は、チリ中南部の小さな町に暮らしていると言われていたが、オリバレスは彼女の正確な住所を突き止められなかった。2週間にわたって何度も町を訪ねては、可能性のある家の扉を叩きつづけたものの、何の成果も得ることはできなかった。

チリの首都サンティアゴに戻らなければならなくなったオリバレスは、この地域に住んでいた自分の叔父に、その後の追跡調査を委ねた。そして2003年の1月、オリバレスの叔父はついに、ディーマーの養子縁組の書類に記載されていたのと同じ名前を持つ女性を見つけだしたのだった。

しかし、その女性はディーマーと直接会うことを拒んだ。当時、彼女はディーマーの父親ではない人物と結婚しており、実の子供ではない「娘」が突然現れることを夫が快く思わないだろう、と考えていたのだ。

それでも彼女はディーマーに、「あなたを手放すつもりはなかったことを知っておいてほしい」と強く望み、さらにこんな言葉を残した。

「生まれたばかりの我が子は盗まれたのです」

 

courrier.jp

 

また9月9日のフジテレビ「奇跡体験・アンビリバボー:産みの母を探す女性 たどり着く驚愕の真実とは!?」にもスウェーデンでの国際養子縁組問題についての番組が報じれれています。

 

さらにイギリスの大手新聞ガーディアンでも1月26日の記事で、チリで子供が盗まれてスウェーデンで養子縁組されている事が報じられています。

 

www.fujitv.co.jp

www.theguardian.comhttps://i.guim.co.uk/img/media/23bdc980ea50c6cec41ccf463a0996d341059028/106_0_1135_681/master/1135.jpg?width=605&quality=45&auto=format&fit=max&dpr=2&s=7a022a4a967e72f708a9721013825ab0

 

スウェーデン政府は1997年から国際養子縁組に人身売買の疑い認識、しかし24年間調査なく対処なし

10月27日のスウェーデンの新聞ダーゲンズ・ニーヘタの記事では、スウェーデン政府はこの国際養子縁組に人身売買の疑いがあると24年前の1997年から警告を受けていたにも関わらず調査もせず対処してこなかったと報じています。

 

しかしスウェーデン国外でもスウェーデンの国際養子縁組問題が報じられるようになってか、スウェーデン政府が国際養子縁組が人身売買にも関連していると認識してから24年後の現在、とうとうスウェーデン政府も国際養子縁組の調査に乗り切ったのでした。

 

記事では、

20世紀半ば以降、約6万人の子供たちが国際養子縁組によりスウェーデンにやってきました。これは、スウェーデンが一人当たり、世界で最も多くの子供を養子にしたことを意味しています。

とも報じています。

 

ただレナ・ハレングレン社会大臣は、個々の養子縁組については調査しないと述べています。新聞ダーゲンズ・ニーヘタがなぜ調査しないのか?という質問に対して、

私たちは6万件の個別の養子縁組事例を現実的な課題として調査することは考えていません 

レナ・ハレングレン社会大臣は答えています。

 

 www.dn.se

 

チリ軍事政権との武器取引

初めスウェーデン政府がチリからの養子縁組に人身売買の疑いがあると警告を受けていたのは1997年です。それから24年後の2021年まで、スウェーデン政府はこの国際養子縁組への調査や対応を行ってきませんでした。

 

7月3日のスウェーデンのオンライン雑誌ニュース・ヴォイスによればスウェーデン政府とスウェーデンの大企業はチリの軍事であるピニェラ政権と武器取引を結んでいると報じています。また1995年にはスウェーデン戦闘機サーブグリペン39を販売していおり、その後の2019年には、成功はしなかったものの戦闘機の売り込みをチリに試みていたと報じています。

 

さらに2019年にスウェーデンの武器工場がチリ南部で操業開始され、チリ政府は(軍事政権の)抗議者を攻撃するのに使用されるスウェーデン製の小型武器を購入したと記しています。

 

これが国際養子縁組問題と関係あるかどうかは定かではありませんが、スウェーデン政府がチリの国際養子縁組問題を知った時期に、スウェーデン政府はチリ軍事政権と武器取引関係があったことがわかります。

 

ちなみにスウェーデン 福祉大国の深層では詳細を記していますが、2014年においてスウェーデン人口当たりイスラエル、ロシアに次ぐ世界3番目の武器輸出額あり、武器輸出総額でも世界で11番目につけ、国内で約3万人が軍事産業企業で雇用される武器輸出国でもあります。

 

newsvoice.se

 

スウェーデンではこの国際養子縁組問題だけではなく、長い間批判や議論は多いものの、長い間解決されない問題が非常に多くあります。

 

その例としてはコロナ拡大で明白となった高齢者施設の脆弱性問題や、ロベーン首相を辞任まで追いやったアパート賃貸問題、

20世紀最悪の海難事故と呼ばれ852人もの犠牲者を出しながらも捜査が一向にされてこなかった1994年にバルト海で沈没したエストニア号沈没事故などがありますが、非常に長い間議論だけされ依然として改善・解決されていません

 

しかし今回明白となったスウェーデンにおける国際養子縁組問題は他の問題とは違い、幼い子供たちが母親の同意もなく全く別の国に送られ(盗まれ)、子供たちの将来が大きく変えられてしまっています。

 

さらに母親の同意なく630組以上の養子縁組がされていたとなると、国家規模での誘拐や人身売買の犯罪である可能性もあるのです。

 

それを長年認知していながら調査も行ってこなかったスウェーデン政府の姿は、人道主義や子供の人権保護を世界に強く主張する国とは、全く反対の国であるようにも見えてしまいます。

 

2020年にスウェーデンは国連の掲げるSGGsで1位、2021年では2位となっています。

ただSDGsの目標には、 人や国の不平等をなくそう (英: Reduced Inequalities)、平和と公正をすべての人に (英: Peace, Justice and Strong Institutions) もありますが、SDGsの評価がどのようにされているのか若干疑問でもあります。

 

それにしろスウェーデン政府は一刻も早く真相を究明し、政治的利用のために今後こうした人道に反する犯罪が起きないようにしてもらいたいものです。

 

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