
スウェーデン「日本のテレビ取材:更衣室にシャワーカーテンを取り付けた小学校 生徒会と生徒民主主義への取材」
2月8日のスウェーデン公共テレビによれば、日本のテレビが生徒会が達成したことの具体例を探していたところ、スカーラ市の小学校の生徒会が更衣室にシャワーカーテンを設置することができたため、その小学校の生徒会と生徒民主主義がどのように機能しているかを取材にしにきたと報じています。
(3月末に20代から30代女性を対象にした番組が、おそらくNHKで報道されるようです)
記事によると、日本のテレビの Mei Akasuma氏は、
日本社会では、若者の意見は未熟であると見なされることが多く、そのため、多くの視聴者はその違いにおそらく驚くでしょう。
生徒会が達成したことの具体例を探していたところ、スカーラの学校の生徒会が更衣室にシャワーカーテンを設置することに成功したと言われた。
と SVTで語ったとのことです。
www.svt.se
確かにスウェーデンでは意見交換が活発です。
誰もが自分自身の意見をいう機会があり自由に発言ができます。
実際にどのようなものかというと、イメージとしては一種のアイデアを生み出す「集団発想法」手法 であるブレーンストーミングのような感じの議論が多く、
皆が思ったとことを発言しているような感じです。
日本でいう議論では自分の意見をまとめて発言しなければいけない雰囲気がありますので、
こうした自由に意見交換する議論方法は日本ではあまりみかけないと思います。
ただそれぞれの人が自由に発言するうちに、徐々に議題と離れてしまうこともあります。
現状:活発の議論と裏腹に解決しない多くの問題
またスウェーデンでは民主主義にとっては議論は大切であり実際に多くの議論はされているのですが、
なかなか日本人では理解しにくいことなのですが、その議論の結果を実行するかはあまり重要ではないのです。
そのため議論だけ多くされるものの、その後何も実行されず問題も解決されないことは非常に多くあります。
慢性期的な医療従事者不足や長い診察まち期間
例えばスウェーデンでは長年、医療従事者不足が問題になっています。
特に夏に医者や看護婦が長期の休暇を取得し、患者が医師に診察してもらえない事が問題になり、
新聞では毎年のように問題として取り上げられていますが、10年以上全く解決されていないのです。
前回のブログでも記した、8年以上も待つ患者もでるほどの手術までの長い待機時間も、
長く議論されていますが一向に解決していません。
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慢性期的な賃貸アパート不足
また賃貸アパート不足も深刻な問題で、日本のように必要なときにアパートが借りられるわけではなく、
アパートを所有していても自由に貸し出すことはできない法律があるため慢性的な賃貸アパート不足に陥っています。
もし賃貸アパートが借りれても家賃が高い状況であり、深刻な問題であると10年以上言われ続けていますが、
いまだに一向に解決していません。
にもかかわらず今年はこれまででの中で最も賃貸料が高いとSVTでは報じもています。
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意思決定者に直接影響を与えていない
日本では議論は問題を解決するためにするものであり、
議論した結果は当然のように実行に移されるのが当たり前だと考えている日本人は多いと思います。
しかしスウェーデンでは議論は多くされるものの、議論だけし満足することが多く、
その後に実行されるかはあまり重要ではありません。
そのため上記に記したように多くの問題が長い間解決されないでいます。
またSVTの記事の中でも日本人の取材者が、
小学生が参加して決めることに、視聴者は驚くだろうと信じています。
視聴対象の(日本人の)女性たちはスウェーデンの様子を見て、刺激を受けることができると彼女は信じています。
しかしその一方で、彼女はそれが意思決定者に直接影響を与えるとは考えていない。
と述べていると記しています。
日本の常識は他の国では通用しない
誰もが自由に意見をいえ、議論はすることは非常に大事です。
しかし現実的に話し合いをするだけで結局解決されることはあまりなく、
実際のところ最終的な決定は、知らず知らずのうちにトップダウンで決まっていることはよくあるのです。
こうした一見、民主主義的であり底辺から物事が変えられるようですが、
実際にはいくら話し合っても何も変わらない現状をしり、意見を言わなくなるスウェーデン人もでてきています。
また最近の出来事としては、
今年1月にスウェーデン当局はスウェーデンの極右活動家のデモを認めコーラン燃やす事件が起きました。
スウェーデン当局はスウェーデンは民主主義国家であり言論の自由があるため、
コーランを燃やすことも許されるため、当局はデモの許可をしました。
そのため実際にコーランが燃やされ、トルコやイスラムの国々から大きな非難をあびています。
また現在スウェーデンではテロの脅威が高まっているとスウェーデン治安警察(Säpo)やアメリカ大使館は警告を出しています。
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日本でも、スウェーデンの自由に意見をいえ議論が活発な点は大いに学んだ方が良いと思います。
しかしメディアは言葉上の表面的な民主主義だけではなく、
実際にその議論が問題解決に繋がっているのか、現実の部分もしっかり調査・分析し報道すべきではないでしょうか
。
他国の表面的な部分だけを取り上げても、本当の意味の民主主義には繋がらないはずです。
またこうした生徒が自分たちの規則を作ることができるのは、
スウェーデンだけではなく、議論方法は違うものの日本の生徒会でも実際にされ校則を生徒自身で変更している学校も多くあるはずです。
更衣室にシャワーカーテンを取り付けた生徒会として、なぜスウェーデンを取り上げる必要があるのでしょうか?
(例として、フィンランドの学校でも生徒会が学校の規則を決めるのは普通に行われています)
日本人のもつイメージは1980年代、現在とは異なる実情
日本では福祉国家のイメージが強いスウェーデンです。たしかにスウェーデンは高い福祉国家でした。
ただ世界は大きく変化しています。
日本も高度成長気から、景気低迷、デフレ、現在の円安、インフレなど大きく変わっているように、スウェーデンも大きく変わっています。
多くの日本人がイメージするスウェーデンの姿は1980年代の福祉国家ではないでしょうか。
しかしスウェーデンは1980年以降に新自由主義に路線にシフトし大きく変化してきています。
またシリア紛争以降から移民・難民が急増し、スウェーデンは現在は移民大国となり、
町を歩けば土着の白人よりもアフリカや中東からの有色人種が多い状況です。
それに伴い凶悪犯罪も増加しているのです。
ギャング抗争と多発する銃撃事件・爆弾事件
近年、毎日のようにスウェーデンの新聞では、ギャングによる銃撃事件、爆弾事件のニュースが報じられています。
特に1月は銃撃・爆弾事件がストックホルムでは非常に多く、加えコーラン焼却事件やデモをうけ、在スウェーデン日本国大使館からも、
スウェーデン在住の日本人に4度もの注意喚起が出るまでとなっています。
スウェーデン政府もギャングの問題は解決すべきな大きな問題としています。
本当の民主主義に向けて
最近、トルコ大統領がスウェーデンのNATO加盟の条件として、クルド人テロ組織グループの引き渡しを求めたこともあり、スウェーデンの現状が日本でも徐々に報道されつつあります。
しかしまだ日本では過去のスウェーデンのイメージを元にした報道が多くされています。
日本のメディアも固定されたイメージでの報道するのではなく、
時代にそくした実情をもっと中立的に報道すべきではないでしょうか?
またスウェーデンのような西側先進国だけではなく、
シンガポールや台湾などアジアの国々でも日本が見習うことのできる国々は多くあるはずです。
しかし西側先進国以外はほとんど報じられていません。
大阪大学 国際政治学、メディア学で国際報道を研究するホーキンス, ヴァージル教授は、
現状はマスメディアが提供する報道を通して世界の一部を断片的にしか覗くことができません。
日本での国際報道は報道全体の10%程度にとどまっており、地域・トピックにおいても大きく偏っています。
国際報道の大半はアメリカ、東アジア、西ヨーロッパに集中しており、アフリカ、中南米、南アジアなど世界の人口のマジョリティを構成する、いわゆる「グローバル・サウス」に関する報道は極めて少ないのです。
このような傾向は新聞、テレビニュース、インターネットニュースにおいても、国営・民営を問わず、偏りはよく似通っています。
と記しています。
良い面ばかりだけではなく、現実の部分も報道していく「報道の中立性」が重要であり、
本当の意味での「民主主義」につながるのではないでしょうか?
www.osipp.osaka-u.ac.jp
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