6月20日のフィンランド公共放送のウーレによれば、アメリカの名門バークレイ大学経済学者エマニュエル・サエズ氏が、北欧の福祉が低下している事を指摘し、特にスウェーデンでは顕著に衰退しているという記事を報じています。
サエズ氏はフランスの経済学者のトマ・ピケティ氏と所得格差の調査で協力し2023年にウィフリ国際賞を受賞した人物です。
サエズ氏によれば、ヨーロッパでは財政難により医療、教育の福祉サービスを民営化に頼る国が増えていると述べています。
その福祉国家の悪化を示す警告例としてスウェーデンを挙げています。
サエズ氏は、
おそらくスウェーデンは、教育と年金制度の民営化を始めた福祉国家の最も露骨な例だろう。
と述べています。
サエズ氏によると、民営化の問題は、人々が自分の子供に適切な学校を選ぶ方法や、お金を上手に投資する方法がわからないことだといいます。選択はますます個人の責任にかかっています。
スウェーデンは年金を年金基金に投資できるモデルに移行しました。
しかし、この状況は多くの人が投資の選択を誤まり、適切な退職の機会を台無しにしてしまうという事実につながっています。
一方、教育の分野では、スウェーデンでは公立学校に代わる私立学校が台頭してきました。
私立学校は、子供たちにとって魅力的な場所であると宣伝することに長けていますが、それが教育の質を保証するものではありません。
親は子供にとって何が最善であるかを常に理解しているわけではありません。
サエズ氏は、スウェーデン福祉の今後を注意深く監視する必要性を語っています。
フィンランドはまだ民営化まで進んでいません。
スウェーデンは、民営化が社会の問題すべてを解決するわけではないことを示す貴重な例だ。
金持ちにお金が流れる現在のシステムと福祉低下と貧富の格差拡大
さらにサエズ氏は、市場経済のメカニズムに頼らずに機能する公共医療も必要だと指摘しています。
サエズ氏によると、西ヨーロッパ諸国の経済格差は拡大し続けており、終わりは見えないといいます。
その理由の一つは、富裕層の納税額が相対的に少ないことが挙げられます。
現在の税制は機能していません。なぜなら、最も裕福な人は所有する会社を通じて収入を得ていることが多く、法人税は一般の所得税よりもはるかに低いからです。
サエズ氏によれば、ここ数十年で富裕国では法人税が大幅に下がったそうです。
50 年前の法人税の平均税率は約 50% でしたが、現在は約 20 ~ 25% となっています。
法人税が高すぎると大企業が隣国に流出し、隣国に税収を奪い取られることを各国が懸念している。
サエズ氏によれば、世界各地での極右の台頭は不満と不平等の拡大の結果であるといいます。
極右は移民が福祉国家を損なっていると非難しているが、実際には金持ちにお金が流れるシステムに介入したくない。
経済学者サエズ氏の記したことは、私の著書『 北欧、幸福の安全保障』で記した事と同じような分析結果を示しています。
現在の金持ちにお金が流れシステムにより、国家は財政難に陥り、医療、教育などの福祉サービスが低下していくためです。
また、この現在の経済システムにより富めるものはさらに富を得て、貧しいものはさらに貧しくなるという、世界における貧富の格差の拡大を引き起こしています。
これは北欧やヨーロッパだけの問題ではなく
世界中で起きている現象です。もちろん、日本も例外ではなく、私たちの子供の未来に大きく影響する大きな問題となっています。
日本ではあまり報道されてはいないかもしれませんが、福祉国家として名の知れる北欧諸国でも、経済学者サエズ氏の語るように福祉の低下が問題視されるようになってきています。
詳しくは『 北欧、幸福の安全保障』に記していますので、興味があればお読みください。
yle.fi