
研究:平等な国ほど男女での関心が大きく違う
スウェーデンは男女平等がすすむ国として日本でよく知られています。
そのためスウェーデン人女性は意見を強く主張するイメージをもつ方もいるかもしれません。確かにテレビなどに出演する女性はそうなのかもしれません。
しかし一般的なスウェーデン人女性(先住の)はそれほど主義主張が強いわけではなく、お化粧にも気を使いオシャレで女性的である人も多いように感じます。
8月18日の公共テレビSVTには、男女平等や生活水準が高い国ほど、男性と女性の好みや性格、職業選択に大きな違いがあるという記事が記されています。
記事によると、SVTのドキュメンタリ「サバンナから火口まで(Från savannen till Tinder)」の中で男性と女性の性格、キャリアの選択、趣向に関し研究しているカロリンスカ研究所心理学者アグネタ・ヘルリッツ教授が、
男性は人よりも物事に興味があり、女性は人に焦点を当てた仕事に興味がある
ジェンダー平等を見て経済学に関連付けると、男女平等な国や生活条件の良い国では男性と女性の趣向はさらに異なっている
と述べていると記しています。
www.svtplay.se
SVTは下記の質問をアグネタ・ヘルリッツ教授にしています。
なぜ私たちは職業に関して性別により固有の仕事を選ぶのですか?
それは私たちが生物として関心があるものを求めているのでしょうか?
アグネタ・ヘルリッツ教授によると、
はい、それを生物学的と呼びたいのかどうかにせよ、これは人間の行動であります。
子供や大人に大工または保育士として働きたいかを尋ねると、非常に明確な性別による違いがわかります。
男の子や大人の男性は人よりも物事の方が面白いと答え、女の子や大人の女性は人と接する仕事に興味があると答えます
と答えています。
www.svt.se
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8月18日の公共テレビSVTの記事によれば科学雑誌サイエンスと心理学国際ジャーナルでも、同じような結論示す研究を発表していると報じています。
この現象はよく知られており、「男女平等のパラドックス」と呼ばれていると記されています。
簡単に言うと、スウェーデンは豊かで平等な国であり、学校でも女生徒が男生徒と同じように扱われています。しかし大学で理工系や数学を学ぶ女生徒は、あまり経済的に豊かでなく平等でない国に比べると比較的少数であるとのことです。
理由はたくさんあるようですが、生物学的によるものなのか社会的要因によるものかはまだ立証できていないと記されています。
ただ現在スウェーデンでは大工のうち約99%が男性であり、助手看護師と保育士の約90%が女性です。
専門看護師のアナ・トレンゲレイド氏は、看護師の男性が不足していますが、生物学的特性が重要であるとは考えていず、
(看護師は)誰にでも適す仕事ではありません。それは個人的な資質に依存します。それは脳によるものであり、性別ではありません
と語っています。
ただリンショーピング大学の脳研究者であるマルクス・ヘイリンク氏は、生物学的に説明ができるとし、
集団の中で女性が複雑な社会的状況を理解できる優れた能力は、患者との意思疎通や周囲の看護師との協力が必要となる看護師として非常に役に立つことは明らかです。そのためこの女性の能力が寄与していることは明白です。
と語っています。
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ノルウェーで低い女性エンジニア比率
また男女平等のパラドックスはスウェーデンだけではなくノルウェーでも同じ傾向があります。
日本の内閣府の男女共同参画局「各国における理工系女性人材の確保に向けた社会制度や人材育成の仕組み 等の取組動向」によれば、男女平等の進むノルウェーでもエンジニア職の女性比率が低いと記されています。
世界経済フォーラムが発表している男女平等指数の2016 年版では、ノルウェイは第3位(1位:アイスランド、2位:フィンランド)であった。後述のように、「ジェンダー同等法(Gender Equality Act)」が1978 年に制定されており、幅広い分野において、男女平等が達成されている。
他方、男女平等が進んだノルウェイでもいくつかの職業においては男女割合に大きな偏りがある。図49 は、保育園・初等中等教育の教師、看護師等の職業では女性が圧倒的に多いのに対して、企業幹部、エンジニアは男性が多いことを示している。STEM 関連職は男女差が大きい例の一つであり、図によれば、エンジニア職の女性比率は1987年で10%、2007年が12%であり過去20 年間で殆ど変化がみられない。

ノルウェイの職業別の雇用数(男女別人数)
内閣府の男女共同参画局
内閣府の男女共同参画局は報告書の中で、
我が国の理工系分野における女性研究者や技術者の割合は増加傾向にあるものの、研究者に占める女性の割合は15.3%(2016年)に留まっており、諸外国の30%程度と比較すると、依然として低い水準となっている。また、増加のペースも3年で1%程度と諸外国と比較して低い状況が続いている。今後、本格的な人口減少社会を迎える中で、世界最先端の科学技術立国を目指す我が国が、持続的な成長を確保し、さらに、イノベーションの創出によって社会の課題を解決するためにも、女性研究者等の活躍を推進することは急務である。
と記しています。
しかし男女平等がすすむスウェーデンやノルウェーでも、現実的に理工系の職業より看護師や保育士を好む女性が多く、その傾向は男女平等がすすみ豊かな国となるほど強くなる「男女平等のパラドックス」という現象もあるようです。
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