
日本では病気になれば、近くの診療所や病院へいきすぐに専門医に診察してもらえるのは当然です。
しかしスウェーデンは日本の医療制度とは違い、すぐに専門医に見てもらうことはできません。まずボードセントラルと呼ばれる総合医師にみてもらい、その診療後に必要があれば病院などの専門医を紹介してもらう、日本とは異なる医療制度を採用しています。
著書『スウェーデン 福祉大国の深層』では細かく記しましたが、スウェーデンでは総合医師から専門医を紹介してもらい、紹介から専門医に診察してもらうまでの時間が非常に長くかかります。
通常時であれば、通常2,3週間診察待ちであることが多いですが、数か月以上待つこともしばしばあります。ときには数年待ちのケースもあります。
スウェーデンの市町村議会の統計 によれば、2021年5月において90日以内に専門医に診断してもらえたのは73%のみとレポートされています。
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さらにこの待ち時間は夏になるとさらに長くなります。夏に医療スタッフも休暇をとるため病院は人手不足となることが多いためです。
7月19日の公共テレビSVTによると、夏の間病院は診察箇所を減らすので診察を受けられない患者が救急科へ集まり、救急科への負担が高くなると報じています。こうした救急科へ過負荷が患者への安全な医療提供に対し影響を与えていると、ウプサラ大学病院の救急科スタッフが証言しています。
また記事によれば、病院は夏には通常時と比較して利用可能な診察場所が約20〜25パーセント少なくなります。そのため多くの患者が治療を必要としているにも関わらず、患者が適切な病棟に移送されず、代わりに救急治療室へ搬送され、救急治療室が過負荷になるとのことです。
ウプサラ大学病院の医療スタッフは、こうした救急治療室での過負荷により十分な診察がないまま患者を帰宅させる必要がでていると証言しています。
これに対しウプサラ地域の病院理事会の議長マリン・ヒョーベリ・ホーグレル氏は
当然のことながら、十分な治療を受けていない患者さんを帰宅させることは非常に深刻です。同時に、今年の夏の救急治療室は非常に厳しい状況だと思います。
私たちは常に最終的な責任を負っています。したがって、長期的解決策と短期的解決策の両方を検討しています。現在、他から医療スタッフを借りてくる事を考えています。これは費用高くなる解決策ですが、医療スタッフが休暇を継続できるようにしたいと考えています。すでに来週から、他から医療スタッフを借りてきて、病院での診察できる場所を開くつもりです
と答えています。
スウェーデンでは多くの人が一斉に休暇を取り、多くの企業も夏季休業となります。
そして病院でも多くの病院スタッフも夏季休暇を取るため、そのしわ寄せが救急治療室への過負荷をうみ、患者も十分な治療を受けられず帰宅させられているのです。
こうした事態に病院は医療スタッフを借りるなどし長期的、短期的にも解決策を検討していると語っています。
しかし医療スタッフ不足は今年の夏に始まった問題ではなく、これまでも長い間毎年のように取り上げられている問題です。しかし何年たっても一向に解決されず、医療スタッフ不足で患者は十分な治療を受けれない状況が毎年繰り返され続けています。
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