スウェーデン 福祉大国の深層 続報!

『スウェーデン 福祉大国の深層』を水曜社より商業出版(政府刊行物)して頂けました。読者の方からの要望を頂きスウェーデンの時事ニュースを主な内容とし、日本にも役立ち社会貢献にもつながるようなブログを記させて頂きます。

スウェーデン「年金不正!投資会社アルラ、年金1億3700万クローナ(約17億4300万円)騙し取り」

年金不正!投資会社アルラ、年金1億3700万クローナ(約17億4300万円)騙し取り

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7月22日、投資会社アルラは年金貯蓄者から年金1億3700万クローナ(17億4276万円)にもおよぶ騙し取りをし、2018年に告訴されていた投資会社アルラCEOを含む被告人4人への判決が言い渡されました。

 

7月22日の公共テレビSVTによると、投資会社アルラのスキャンダルは、プレミアム年金制度が導入されて以来最大のスキャンダルの1つであり、年金貯蓄者は1億3700万クローナ(約17億4300万円)を騙し取られていた疑いがあるとのことです。

 

そして投資会社アルラの重役は、パーティー旅行プライベートジェット高級車で贅沢な生活を送っていたと報じています。

 

2018年10月、投資会社アルラの創設者アレクサンダー・エルンストバーガー、デビッド・パーソン・ロスマンを含む4人は背任罪賄賂授受税務違反マネーロンダリングなどで起訴されました 

 

www.svt.se 

しかし弁護士界の日刊紙ダーゲン・ジュリディックによれば、2020年1月31日、地方裁判所は、検察官が主張を立証できておらず多くの起訴を却下しました。そしてCEOエルンストバーガーは無罪判決を受け、他の3人の被告人も釈放されたのでした。 

 

www.dagensjuridik.se 

判決後、CEOエルンストバーガーは、

私は犯罪を犯していません。それどころか、年金貯蓄者は、メディアでの論争の中でも説明されているように1億2000万以上を稼いでいることが証明されています。

私とアルラ関係者に多くの注目が集まっていますが、残念ですがメディアや世論で噂や憶測が事実に先行しています。しかしようやく救済を受けるのは気分がいい

と語っていました。

 

しかし2021年7月22日、スベア控訴裁判所で再審が行われ、前回の地方裁判所の判決を覆し、投資会社アルラのCEOのエルンストバーガーを含む4人に、4年から6年の禁固刑を言い渡されたのでした。 

  • CEOエルンストバーガーは賄賂と背任罪で6年の懲役と10年の禁固刑、
  • デビッド・パーソン・ロスマンは賄賂と5年間の懲役、10年間の禁固刑、
  • 元ファンドマネジャーは元本に対する背任罪で4年の懲役、
  • オークキャピタルの元CEOは賄賂、元本への不貞の援助と幇助、簿記違反の5年の懲役と10年間の事業禁止の刑

を言い渡されました。

 

現在、CEOエルンストバーガー、デビッド・パーソン・ロスマン、オークキャピタルの元CEOは逮捕され、元ファンドマネージャーは旅行を禁止されます。

 

被告人はスウェーデン年金庁に約1億7000万クローナ(約21億6200万円)の損害賠償と2012年から利息も支払う必要があります。

 

こうして1億3700万クローナ(約17億4300万円)もの年金を騙し取りっていた投資会社アルラのCEOなどが逮捕されたのでした。

 

腐敗度ランキング上位、不正疑惑事件の多いスウェーデン

しかしスウェーデンではこのアルラ不正事件以外にもとても多くの不正事件が起きています。

 

ただ一般的に日本ではスウェーデン不正の少ない国であるとしてよく知られておりイメージと違うのではずです。

 

なぜでしょう?

 

その理由の1つに、腐敗や汚職に対して取り組む国際非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルの「腐敗度ランキング」があります。その「腐敗度ランキング」で毎年スウェーデンは不正が少ない国として上位にランキングされるためです。

 

2020年における「腐敗度ランキング」では、日本が19位であるものの、スウェーデンは3位にランクインしています。 

 

しかし実はスウェーデンでは非常に不正疑惑事件が多いのです。

いくつかの例として、

  • 2015年、軍事企業サーブ1,800万クローナ(約2億1千万円)相当の賄賂
  • 2017年、通信大手テリアは携帯通信事業の権益を手に入れるため、長年に渡り政府関係者に3億3千万ドル(約366億円)の賄賂
  • 2019年、スウェーデン大手銀行スウェドバンクでは、ダンスケ銀行との間で最大2千億ユーロ(約25兆円)もの「パナマ文書」関連の資金洗浄と疑われる顧客資金移動に関与

 

 

など他にも多くの不正事件が起きています。

 

しかし、これほどまで大規模の不正事件が多いスウェーデンが、腐敗度ランキングで上位にランキングされるのでしょう?

 

それには腐敗度ランキングの統計方法と関連しています。

 

著書『スウェーデン 福祉大国の深層』では細かく記していますが、アメリカの新聞ワシントン・ポストによると、腐敗度ランキングを決める腐敗認識指数(CPI)「公共部門」のみを対象にしています。そのため民間での不正事件は対象には含まれません

 

また汚職の事実ではなく、人々の「認識」をもとに指数を測定しています。そのため人々が不正事実を認識していないと腐敗認識指数(CPI)がよくなるのです。

 

www.transparency.org 

そのためスウェーデンは毎年のようにトランスペアレンシー・インターナショナルで「腐敗度ランキング」で上位にランキングして、世界に不正や腐敗が少ない国としてよく知られているのです。

 

今回の年金1億3700万クローナ(約17億4300万円)もの騙し取りをした投資会社アルラの4人の受刑者は、私利私欲のために老後のために必死で貯蓄してきた年金をだまし取った許しがたい不正事件です。

 

今後弱者に被害を与えるようなこうした不正事件が、少しでもスウェーデンから減っていってほしいものです

 

kon-51.hatenablog.com