スウェーデンというと平和主義国家として広く知られています。そのため人権運動やジェンダー問題などへの取り組みが盛んなイメージが強いかもしれません。
実際に女性の社会進出は進んでおり、職場でも女性に働きやすい環境が日本より整っています。
こうした人権保護、ジェンダー問題に積極的に取り組む人権国家のイメージとは裏腹に、軍事産業が活発であることはあまり知られていません。
そうしたスウェーデンの軍事輸出の主力製品として、サーブ社製戦闘機のグリペンがあります。
グリペンは大量の武器を搭載できるわけではなく、高いステルス技術も持っていませんが、極めて強力な電子戦能力を備えている多用途戦闘機です。
このサーブ社製のスウェーデン空軍のみならず、南アフリカ、ブラジル、タイ、ハンガリーなどの国々へも販売され導入されています。
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そしてフィンランドでもこのスウェーデンのサーブ社製戦闘機グリペンを、導入するかがこれまで検討されていました。
しかし12月14日のスウェーデン公共テレビSVTによると、フィンランド政府は10日に新しい戦闘機をアメリカのロッキード・マーティン社からF-35ライトニングIIを64機注文すると発表したのでした。
12月11日のフランス通信社AFPによれば、今回のフィンランド政府とロッキードマーティン社との武器契約は84億ユーロ(約1兆1,000億円)に上りフィンランドで最大の武器取引になるとのことです。
この取引額はフィンランドの2020年の歳入(1,216.8億ユーロ)の約6.9%にも当たるほどの巨額な取引額となったのでした。
www.afpbb.com
仮にフィンランドがサーブ社と契約を結ぶことができた場合、SVTの記事によるとサーブ社はグリペン戦闘機とグローバルアイ戦闘機および監視航空機と販売で100億ユーロ相当(約1.28兆円)の取引を見込んでいたとのことです。
これはスウェーデンの2020年のGDP(4兆9833.6億クローナ)に対し約2%にも当たる巨額取引となるはずでした。
しかしサーブ社製のグリペンはアメリカボーイング社F / A-18スーパーホーネットに次いで3番目でありました。
アメリカンのボーイング社のスポークスマンは、
フィンランドの決定には失望しています。しかし、F/A-18ブロックIIIスーパーホーネットとEA-18Gグローラーの提供する次世代機能と独特価値には自信があります。
とコメントしています。
スウェーデンのサーブ社は
フィンランドが別のメーカーを選んだ理由について、これ以上コメントする理由はありません。
グリペンとグローバルアイには非常に強力なオファーであったと思ったのですが。
と述べています。
フィンランド史上最大の武器取引であったため、ボーイング社もサーブ社の担当者も落胆している様子が記事に記されています。
スウェーデンサーブ社戦闘機グリペン 動画
www.youtube.com
www.svt.se
1976年 世界的な大規模汚職のロッキード事件と武器取引
ちなみに1976年に明るみになった戦後最大の汚職事件としてロッキード事件がありましたが、アメリカの航空機製造大手のロッキード社(現ロッキード・マーティン社)による主に同社の旅客機の受注をめぐって、1976年(昭和51年)2月に明るみに出た世界的な大規模汚職事件でした。
ロッキード事件の発端は、1976年2月の米上院外交委員会で、ロッキード社の副会長アーチボルド・コーチャンが、航空機売り込みのために各国の政府高官に賄賂を渡したことを暴露したことでした。
そしてコーチャンは日本にも30億円を超える工作資金をばらまき、全日空へロッキード社の旅客機「L-1011トライスター」の売り込みに成功し、防衛庁に対しては次期対潜哨戒機「P-3Cオライオン」の採用を工作したと証言したのでした。
対潜哨戒機とは敵潜水艦を捜索,探知,攻撃する軍用機のことです。
日本では30億円にも及ぶ大きな賄賂事件であり戦後最大の汚職事件と呼ばれたのでした。
しかしロッキード事件は日本だけではありません。
ロッキード社(現ロッキード・マーティン社)による賄賂は西ドイツ、イタリア、オランダなどでも行われ、西ドイツでは1,000万ドル(約30億円)、オランダでは110万ドル(3.3億円)もの賄賂、サウジアラビアでは1億600万ドル(約318億円)の手数料が支払われたと言われています。
軍事輸出による巨額取引とその不正が日本だけではなく、多くの西欧諸国でも行われていたことがわかる武器取引による世界的な大規模汚職事件だったのでした。
www2.nhk.or.jp
今回のフィンランドとロッキード・マーティン社の取引も非常に巨額な武器取引額でした。実際の取引がどのように行われたかはわかりませんが、この取引に関係する各国政府や企業同士での駆け引きや利権が渦巻いていたのかもしれません。
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