ロベーン首相、政府目標は2045年までに温室効果ガスを排出しない
8月9日の公共テレビSVTによると、ロベーン首相がIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の気候報告書を受け、気候は私たちの時代において大きな問題であると語っています。
IPCCの新しい気候報告書によると、20年以内に世界の平均気温は1.5度の温暖化に達するか、それを超えるとのことです。
ロベーン首相は「科学は非常に明確であり、疑いの余地はありません」と自身のインスタグラムの中でコメントし、政府の目標は2045年までにスウェーデンが温室効果ガスを排出をしいことであると述べています。
またロベーン首相は
「私たちは引き続きグリーン移行を推進し、排出量を削減し、主要な排出国にパリ協定を遵守し、排出量の削減に支援が必要な国を支援するよう圧力をかけます」
とも記しています。
さらにペール・ボールンド環境気候大臣は、この気候報告書を非常に大きな警告とみなし
私たちは今、一歩踏み出して、化石燃料の使用を禁止しなければなりません。また、最後の一滴のオイルを販売する停止日も設定します
たとえば、石炭火力への投資を停止する決定を下すことができるはずだ
と語っています。
www.svt.se
国有大手電力会社ヴァッテンフォールと原子力発電
スウェーデンにはヴァッテンフォールとよばれる国有企業の大手電力会社があります。
ヴァッテンフォールのホームページによると、スウェーデンの電力生産は今日98%が化石燃料を含まず、半分強が再生可能エネルギーから来ているとあります。また化石燃料を含まない電力を大量に輸出しているとのことです。
ただヴァッテンフォールは再生可能エネルギーではないものの、化石燃料を含まないエネルギーには原子力エネルギーを含めています。
ヴァッテンフォールによれば、原子力発電は効率的で信頼性が高く、温室効果ガスをそれほど排出しないため、スウェーデンの電力のほぼ半分は原子力発電であります。
またヴァッテンフォールはスウェーデンの6基の原子炉のうち5基を運用しているとあります。
大手電力会社ヴァッテンフォールは、二酸化炭素を含まないエネルギーとして原子力エネルギーを多く利用し、大量に他国に輸出していることもわかります。
kon-51.hatenablog.com
日本の電力割合
環境エネルギー政策研究所による2020年の自然エネルギー電力の要旨は次のようになっています。
-
2020年 (暦年)の日本国内の全発電電力量(自家消費含む)に占める自然エネルギーの割合は前年の18.5%から20.8%に増加したと推計される。
-
日本国内の太陽光発電の年間発電電力量の割合は、2020年には前年の7.4%から8.5%に増加し、VRE(変動する自然エネルギー:太陽光および風力)の割合は8.2%から9.4%に増加した。
-
バイオマス発電(3.2%)の年間発電電力量は前年から約2割、風力発電(0.86%)も1割程度増加しており、地熱(0.25%)および水力(7.9%)も前年からわずかに増加している。
-
化石燃料による火力発電の年間発電電力量の割合は前年から横ばいで74.9%と依然高いレベルであるが、石炭(27.6%)およびLNG(35.4%)は減少傾向にある。原子力発電は前年の6.5%から4.3%に減少した。
-
欧州では、すでに自然エネルギーの年間発電電力量の割合が40%を超える国が多くあり、欧州全体の平均でも38.6%に達して、化石燃料による発電の割合37.3%を始めて上回った。VRE(変動する自然エネルギー)の割合もデンマークの55%を筆頭に20%を超える国が多くある。
-
2020年(暦年)の電力需給データにおいて、北陸電力、東北電力、四国電力エリアでは自然エネルギーの割合が年間電力需要量の30%を超えた。1時間の最大値では日本全体で70%近くに達しており、VREは最大57%だった。1時間の最大値で四国電力、東北電力および九州電力エリアにおいて自然エネルギーの電力需要に対する割合が100%を超えた。
日本全体の電源構成(2020年) 出所:環境エネルギー政策研究所
www.isep.or.jp
依然として化石燃料への依存が高いですが、自然エネルギーによる電力は2014年で12.1%でありましたが、2020年では20.8%にまで増えてもいます。
また2011年3月の東日本大震災により起きた福島第一原発事故以降、日本では原子力発電の稼働が減り、福島原発事故以前は54基あった原子力発電所は、現在33基までになっています。
原子力エネルギーの占める電力の割合は、福島原発事故以前の2011年2月では31.3%でしたが、2014年には0%になり現在は原子力の占める電力の割合は4.3%となっています。
www.japanfs.org
www.world-nuclear.org
スウェーデンエネルギー局(energimyndigheten)によると、2020年のスウェーデンでの電力エネルギーの割合は、水力発電45%、原子力発電30%、風力発電17%、火力発電8%です。
風力発電のシェアは総発電量の11%から17%に増加し、水力発電は前年度と比較して10.2パーセントの増加したとあります。
原子力発電は、年間で47.3 TWhの電力を生産し、前年度と比較して27%減少しました。従来の火力発電はこれは2019年と比較して18%の減少したとあります。
世界原子力協会によると現在の稼働中の原子力発電所の数は現在6基となっています。
人口比で考えると日本よりスウェーデンのほうが約2.24倍ほど原子力発電所が多いことになります。
www.world-nuclear.org
公共テレビSVTの記事でロベーン首相は政府の目標として、2045年までにスウェーデンが温室効果ガス排出しないと述べています。
日本より自然エネルギーによる発電の割合が高いスウェーデンでありますが、原子力エネルギーの割合は日本よりも高くもあります。
今後スウェーデンが2045年までに温室効果ガスを排出をしないという目標に達成するため、再生可能エネルギーを増やすのか、それとも原子力エネルギーへの依存を増やすのか注目すべき点でもあります。
kon-51.hatenablog.com
リンク