2019年の高所得者層向けの減税策
日本人が抱く一般的なスウェーデンのイメージとして、税金は高いが福祉が充実し格差が少なく、国民が平等に暮らす国なのではないでしょうか?
確かにスウェーデンの最低所得者への所得税率は日本の15.11%よりも高く32%であり、日本の消費税に当たる一般間接税は25%であり、日本の10%より高くなっています。
しかしアメリカの統計データを扱うワールド・ポプュレーション・ヴュワーによる2021年の最高税率比較データによると、日本の最高所得税率は55.95%、スウェーデンは57%とそれほど大差がありません。
反対に法人税はスウェーデンが21.4%、日本は29.74%と日本のほうが高くなっています。
このデータからスウェーデンでは高所得者における所得税は日本とあまり変わりなく、反対に一般的な所得者や低所得者への所得税は高額で、法人税はスウェーデンのが日本より低いことがわかります。
日本人がイメージしているよりは高所得者への税率が低いなのではないでしょうか。
worldpopulationreview.com
7月20日の公共テレビSVTの記事によると、これまで富裕層に課していた富裕税を2007年に撤廃したと記しています。
www.svt.se
さらに著書『スウェーデン 福祉大国の深層』でも記しましたが、2019年4月のニューズウィーク では、社会民主労働党率いる政府が導入する高所得者層向けの減税策を打ち出し、これまで70万クローナ(約840万円)を超える年間所得者に上乗せされていた、5%の税金が廃止されることになったと報じています。
そして富裕層への減税や他の広範囲な所得減税による200億クローナの減収は、高齢者介護や海外援助向け予算の削減、環境税の引き上げにより一部相殺されるとのことです。
またニュースウィークの記事には
世界の富裕層に関するクレディ・スイスの調査によると、スウェーデンの最富裕層1%が自国に占める富の割合は、米国のそれよりも大きい。
と記されています。
www.newsweekjapan.jp
格差拡大、廃止された富裕税の再検討か!?
2019年に実施された高所得者への富裕税廃止ですが、2021年7月20日の公共テレビSVTの記事によれば、与党である社会民主党は億万長者税を導入したいと報じています。
社会民主党、財務相マグダレーナ・アンダーソンは、現在社会での不平等が大きすぎ益々拡大しているため
最も裕福な人はもっと貢献すべきだと思う
(億万長者税は)もちろん一般の従業員や一般の人々に影響を与えることを目的としたものではありません。 しかしながらスウェーデンでは富裕層な割合が非常に変化し、ここ数十年でこれまで以上にはるかに裕福になっていることがわかります。
と述べています。
しかしこれに対しスウェーデン企業連盟は反発しています。
また中右党モデレートの経済政策スポークスマン、エリサベト・スバンテソン氏は、
人々は不平等に取り組むべきであり、また多くの人は働くべきです。 仕事がある人と仕事がない人ではこれが最大の違いです。多くの人々が自分の仕事を得て、税金を支払わなければなりません。 これがスウェーデンを強く構築する方法です
とSVTのインタビューで語り、金持への増税は不平等を食い止める正しい方法ではないとしています。
www.svt.se
現在のスウェーデンの街中を歩くと、必ずとも言えるほどショッピングモールやスーパーの入り口前にホームレスがおり、物乞いをしている姿を目にします。こうしたホームレスはルーマニアから来たといわれていますが、スウェーデン人らしき人もときどきみかけます。
近年、低所得者や難民が多く住む地区で、拳銃事件など凶悪犯罪も多発しています。
今回、社会民主党が提案する億万長者への課税が実際に実施されるかは定かではありませんが、何にしろスウェーデンで広がる格差拡大に歯止めをかけてもらいたいものです。
www.svt.se
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