
スウェーデンでは男女同権などのフェミニズムが進んでいることはよくしられています。ただ政府が2014年からフェミニズム外交を行っていることは知る人はあまりいないのではないでしょうか。
現在、ロベーン首相に代わる新しい首相としてマグダレーナ・アンダーソン氏(社民労働党党首・元財務大臣)が最有力候補として挙げられ、スウェーデンで初の女性首相となる可能性が高いです。
そうした中8月23日の公共テレビSVTの記事では、ヨーテボリ大学政治学のヨナス・ヒンフォース教授は、
アンダーソン財務大臣が女性であることを無視できません。女性党首だけでなく、長期的に女性首相が誕生すれば、フェミニスト政党党と自負している 社民党にとっては、帽子についた飾り羽のようになるだろう。
と語っています。
www.svt.se
この記事の中で、ヨーテボリ大学政治学のヨナス・ヒンフォース教授が社民党がフェミニスト政党と自負しているという発言は、社民党の進めるフェミニズム外交のことです。
フランス通信社AFPによると、2018年にスウェーデン政府は重要政策としているフェミニズムに基づいた外交政策について、人権団体や諸外国の政府へ向けたマニュアルを発表したとのことです。
そのため日本を含めた世界中の国々で、スウェーデンは男女同権、差別撤廃、平和や平等の国であるというイメージがますます強くなっています。
www.afpbb.com
しかしこのフェミニズム外交には矛盾点も存在します。
スウェーデン 福祉大国の深層では細かく記していますが、このフェミニスト外交に対して専門家の間には批判的な意見も少なくありません。
一般的にあまり知られてはいませんが、スウェーデンは武器開発や製造を行っており武器輸出も他国にしています。よく知られているのがサーブ社の戦闘機グリペンです。2014年においては人口当たりではイスラエル、ロシアにつぐ世界第3位でありました。
www.saab.com
こうした平和や差別撤廃を唱えるフェミニズム外交とは裏腹に、武器輸出を実施している状況に対して、ルンド大学平和紛争研究所のカリン・アゲスタム元所長は、
スウェーデン政府はフェミニスト外交政策を実施している自国を人道的超大国であると考えているが、実際には女性差別がひどいサウジアラビアなどにも武器輸出を大量に行っている。そしてこうしたスウェーデン製の武器輸出は女性への暴力や抑圧を促進するもので、フェミニスト外交政策は考えられているほど平和主義と密接に関連していない。
と述べています。
www.cambridge.org
現在、スウェーデンでは次期首相の選出を行っていますが、最有力候補として与党・社会民主労働党の党首アンダーソン氏がいます。もしアンダーソン氏が首相として選ばれれば、スウェーデンで初の女性首相が誕生することになります。
もしアンダーソン氏が首相になったときには、真の平和や平等を実現するフェミニスト外交を実施してもらいたいものです。
フェミニスト外交および武器輸出に関して詳しくお知りになりたい方は、スウェーデン 福祉大国の深層をお読みください。
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