スウェーデン 福祉大国の深層 続報!

『スウェーデン 福祉大国の深層』を水曜社より商業出版(政府刊行物)して頂けました。読者の方からの要望を頂きスウェーデンの時事ニュースを主な内容とし、日本にも役立ち社会貢献にもつながるようなブログを記させて頂きます。

フィンランドとスウェーデンの緊急事態時への備えの大きな違い

本日のスウェーデン感染者状況 

本日におけるスウェーデンの感染者総数は7,693人、死亡者591人、100万人あたりでは762人になっています。 

日本の感染者数が4,257人、死亡者93 人、100万人あたりでは34人ですので、スウェーデンは人口あたり22倍以上も日本よりコロナ感染が広がっていることになります。 

コロナ危機の間において政府が力を強める決定

4月7日の新聞エクスプレッセンによると、政府は、コロナウイルスの蔓延を防止するために政府が迅速な決定を下せる権限が持てることを可決しました。そのため議会の承認を得ることなく、政府は学校やショッピングモール、レストランなどの閉鎖が可能になります。この法律は4月18日から6月30日まで適用され、コロナウイルス危機に関連する措置のみ適用されることになります。 

www.expressen.se

 

フィンランドスウェーデンの緊急事態への備えの違い

4月7日にフィンランド政府は、これまでのコロナ感染拡大防止規制に加え、さらにコロナ対策が厳しくなく、感染率が高いスウェーデンとの国境を厳しく取り締まる措置を講じました。この措置によりスウェーデンからの労働者は、国境を超える場合には雇用主からの許可証の携帯、およびフィンランド到着時には14日間検疫下に置かれなければならないことを決定しました。こうした厳しい規制をもうけているフィンランドは、ヨーロッパの中ではもコロナ感染率を低く抑えられている国です。しかし反面、スウェーデン政府はいまだに具体的な規制をほとんど行っていません。そしてスウェーデンのコロナ感染者は現在急増しています。

The Local『Coronavirus: How Finland’s new border measures affect Sweden』7 April 2020

https://www.thelocal.se/20200407/coronavirus-how-finlands-new-border-measures-affect-sweden

 

スウェーデンフィンランドは隣同士の国です。そのため日本人にとって北欧というとスウェーデンフィンランドも同じようにイメージするかもしれません。しかしフィンランドスウェーデンは民族も違えば歴史も違います。スウェーデンはゲルマン系なのに対して、フィンランドはフィン人とも呼ばれ、どちらかというと日本人に近いモンゴロイド系のDNAをも含む民族なのです。またフィンランドスウェーデンやロシアに長い間侵略されてきた歴史があり、1918年にとうとうフィンランド共和国が成立しました。このように一見似ているようなスウェーデンフィンランドですが、大きく異なる国なのです。そして現在のコロナ危機下でも両国の対応は大きく違います。

 

フィンランドは551万人の国であり、スウェーデンの人口の約半分程の人口です。しかしフィンランドのコロナ感染者数はスウェーデンと比べると約3分の1ほどに抑えられています。しかしフィンランドは3月16日早々に非常事態を宣言し、コロナ感染症に対処するための追加措置を発表しました。  

その主な措置は、海外渡航禁止(陸路含む)、フィンランド人と在留外国人を除く渡航者の入国停止、10人超の集会の禁止、公営博物館・劇場・文化施設・図書館やスポーツ施設の閉鎖など。また、3月18日より学校や大学は閉鎖となり、自宅でのEラーニングまたは自習へと移行。ただし、保育・幼児関連施設と小学校低学年を対象とした対面教育は、業務上、就業が必須とされる親の子女のみを対象に継続します。そしてこれらの措置は、4月13日まで続けられる予定です。

www.jetro.go.jp  

スウェーデンフィンランドよりも遥かにコロナ感染が大きくなっています。しかし現在も具体的な規制や、非常事態宣言も出されておりません。このように同じ北欧でもフィンランドスウェーデンはコロナ対策でも大きく違っています。 

 

こうしたスウェーデンフィンランドの大きな違いは、4月5日のニューヨークタイムズにも記されています。 

www.nytimes.com

 

ニューヨークタイムズの記事よるとフィンランドは、冷戦下にソ連と隣国する国であったため、常に緊急事態を想定して、医療マスクなどの個人用防護具などを備蓄していました。さらに医薬品だけでなく油や穀物、農業用具、弾薬を作るための原材料も備えていました。 しかしスウェーデン冷戦時代には医薬品、燃料、食料を備蓄していましたが、その後は全て廃棄してしまい緊急事態のための備蓄がまったくないとの事です。

 

そのため今回のコロナ危機では、緊急時のために備えていたフィンランドは、医薬品、食料など十分揃っていますが、緊急事態を何も想定していなかったスウェーデンには医療品や燃料、食料などがまったくないのです。

 

4月5日のスウェーデン共テレビSVTでも、フィンランドには緊急事態用に医薬品をそろえているが、スウェーデンは緊急用の医薬品がないと報道しています。 

www.svt.se

さらにこのSVTのニュースでは、フィンランドの法律で、フィンランドが緊急事態用を想定していた備蓄品はフィンランドのためにしか使用してはならないとあり、スウェーデンの分はないと報道されています。若干スウェーデンフィンランドから備蓄を貰える事を期待していたようにも感じます。
同じ北欧諸国でも、スウェーデン政府とフィンランド政府との緊急事態への備えには大きな違いがあることがこの記事からよくわかります。