スウェーデン「ギャング間抗争が急増 加害者の低年齢化の背景とは(AFP通信より)」
1月20日のAFP通信で現在のスウェーデンのギャング犯罪状況が報じられていますので、下記に抜粋します。
【AFP=時事】スウェーデン東部ウプサラの集合住宅に住む教師のトーマス・セルバンさんは、昨年9月のある夜、建物内部で鳴り響く銃声で目を覚ました。同国で急増しているギャング間の抗争がすぐ近くで起きたのだ。
これまで比較的治安が良かったスウェーデンでは近年、暴力事件が多発している。「子ども兵」による処刑スタイルの銃撃事件が発生し、建物が爆破され、報復のために家族が狙われるケースも起きている。
ウルフ・クリステション首相は、「欧州でこれほどの事態が起きている国は他にない」とし、ギャング犯罪の根絶を表明。現行法ではギャング間抗争や子ども兵は適用外だとして、法改正を行う考えを示した。
ギャング間の抗争は、同国での麻薬市場の支配権をめぐって10年前からくすぶってきた。しかし昨年、状況が一変した。内部抗争でギャングの構成員の家族や恋人までもが標的にされるようになったのだ。
セルバンさんが暮らす集合住宅で起きた事件でも、標的になったのは悪名高いギャング「フォックストロット」のリーダーで、「クルドのキツネ」の異名を持つラワ・マジドの義理の母親だった。この時、マジドの義母に被害が及ぶことはなかった。
■「もはや無秩序」
「(襲撃された)女性がマジドの親族だったとはまったく知らなかった」とセルバンさんは言う。
「こうした状況に多くの人がおびえている。ギャングの友人や親族がどこにいるのかなど誰にも分からない」
ストックホルム大学のフェリペ・エストラーダ・ドルナー教授(犯罪学)はAFPに対し「襲撃の対象が、ギャングの抗争とは無関係の家族にまで拡大している」と述べ、「もはや無秩序」だと指摘する。
「そこがこれまでの犯罪とは大きく異なる点だ」
警察によると、昨年は11月までに銃撃事件が300件以上起きており、死者数は50人前後に上った。2016年は、同様の事件での死者数は7人にとどまっていた。
■「うつろなまなざし」の若者
こうした事件では、被害者、加害者ともに低年齢化が進んでいる。
スウェーデンの全国犯罪防止協議会が11月に発表したデータによると、22年に銃器の不法所持で取り調べを受けた若者(15~17歳)は336人に上った。これは、10年前の8倍の数字だ。
ギャンググループは近年、契約殺人を実行させる目的で未成年者を取り込んでいる。中には15歳未満の子どももいる。18歳未満は刑務所に収容されない法律を悪用しているのだ。
アンデシュ・トーンベリ元警察庁長官は、「未成年者の方から犯罪組織にアプローチ」して殺人の実行を請け負っている実態を明かした。
ドルナー教授も、そうした子どもたちは「銃器の扱いに慣れていない」ため、近くに居合わせた人が流れ弾で死傷するケースも多いと説明した。
ギャングの若い構成員を取材し、その声をまとめた「Mitt ibland oss(私たちの中で)」を刊行した元弁護士のエビン・チェティン氏は、「彼らは犯罪者から学び、寝食を共にして、暴力の文化を吸収している」と話す。
「実際に会うと、若いメンバーの多くは、うつろなまなざしで、自分の人生に価値を見いだせていない」
■「社会統合の失敗」
スウェーデンで組織犯罪が急増している背景には、移民に対する「認識の甘さ」があるとクリステション首相は述べる。
「無責任な移民政策と社会統合の失敗がこの問題を引き起こしている」との主張だ。
しかしチェティン氏は、社会統合の問題は、移民の人々が味わう分離や差別に大いに関係していると言う。
「世界有数の富裕国で暮らす若者が、なぜ自ら進んで殺人に手を染め、親友までも殺すようになるのか」
「(犯罪に走る)こうした状況が、彼らが直面する分離や差別、置かれている環境、社会から疎外された経験について多くのことを物語っている」と指摘した。
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