
人口当たり日本の122倍にも及ぶ爆発事故件数
スウェーデンでは近年拳銃事件やギャングによる犯罪が増加しています。それに加え爆発事件も増加傾向にあります。
1月24日のスウェーデンの公共ラジオSRの記事によると、スウェーデンでは2019年に257件の爆発事故が起きており、2018年は162件であったため、2018年と比べ60%の増加とのことです。
sverigesradio.se
日本では爆弾事故の統計がみつかりませんでしたが、経済産業省のLPガスの漏洩爆発事故は2019年では26件でありました。
スウェーデンの爆発事故件数と日本のLPガスの漏洩爆発等を直接比較はできませんが、参考までに示すと人口当たり約122倍スウェーデンの爆発事故が日本より多いことになります。
ただスウェーデンの場合、爆発事故だけではなく爆弾事件の場合もあります。そうした爆弾事件にギャングメンバーなど関与している犯罪事件であることもしばしあります。
経済産業省「2021年事故集計表」
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/lpgas/lpjiko/jikosyukei_2020.pdf
爆発事件:爆弾による警察官自宅爆破の可能性あり
そうした中、9月28日にヨーテボリ市のアネダル地区のアパートで大爆発が起き、スウェーデンでは大ニュースとなっています。
この爆発はアメリカのテレビチャンネルCNNでも報じられています。
www.cnn.co.jp
9月28日のスウェーデンの公共テレビSVTによると、ヨーテボリ中心部にあるアネダル地区のアパートの3階吹き抜けの箇所で爆発が起き、6人が重傷を負い数百人がこの建物から避難したと報じられています。
爆発火災の警報が届いた28日の朝5時頃であり、これが大規模な火災であるとすぐに判明し救助隊は18ユニットで現場に出動しました。
ヨーテボリ新聞の記事によれば、大きな衝撃から目を覚ましたアパートの住人は、バルコニーから飛び降りなければならなかったとも語っています。
事故直後の報道(Youtube)
www.youtube.com
この大爆発で少なくとも6人が救急車で病院に運ばれました。そのうち6人は重傷を負っています。軽傷を負った別の18人がバスで病院に運ばれました。そのうち3人が救急治療室で治療を受け、軽傷者の中には10歳の子供もいます。
この爆発事故の通報を受けて爆弾処理班、警察、救急車も現場に到着しています。警察は発生当初、何が起こったのかほとんど情報がなかったため、爆弾事件を想定しての対応を開始することを決定しました。

この場所はヨーテボリ市での市内中心部にあるアパートが密集する地域です。今回の爆発が事故であるか、爆弾によるものかはまだ判明していません。
しかしSVTの報道によれば、警察はこの爆発が何者かよって引き起こされたと考えているとのことです。


スウェーデンのロベーン首相も
私はこの恐ろしい爆発に対するすべての犠牲者に目を向け、犠牲者への私自身および政府からの共感の意を表明したいと思います
と語っています。
爆発から7時間たった時点(28日12時点)でもまだ煙が立ち上がり消火活動が続いています。

ちなみに1年前の2020年8月19日にもヨーテボリ市内のマヨーナ地区では爆発が起き爆弾処理班が出動する事態が起きましたが、この時は爆弾事件でした。
www.gp.se
そのためこのアネダル地区での大爆発も警察が発表しているように、何者(ギャングメンバー)かによる爆弾事件であることも十分に考えられます。
また9月28日のテレビチャンネルであるTV4の報道によると、警察官の住むアパートを爆破した可能性もあるとのことです。
www.tv4.se
記事によれば、昨年5月にヨーテボリの旧市街地区で、30代の男性が路上で自動小銃により銃撃されました。そして今年7月にヨーテボリ地方裁判所は13人を殺人罪で有罪とし、そのうち4人は終身刑を宣告しました。
27日に控訴裁判所での交渉が始まりましたが、28日に起こった大爆発は裁判で証言した警察官の一人のが住むアパート建物での大爆発でした。幸いこの爆発が起こったとき警察官の家には誰もいませんでした。
またこの警察官は1週間後にマネーロンダリングで告発されたギャング犯罪の容疑者に対しても裁判で証言する予定です。
警察はこの爆発は偶然なのかもしれないが、現在関係があるかどうか捜査中とのことです。
ギャングの強い影響を受けるヨーテボリ市
もしこの大爆発がギャングなどの組織犯罪であった場合、これまで移民地区で頻発していたギャング犯罪が市内中心まで拡大してきていることになります。
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またギャング同士の銃撃事件だけではなく、ギャングと対峙する警察官まで襲う事態となっています。実際に7月1日にヨーテボリ市では警察官が射殺されています。
kon-51.hatenablog.com
仮に今回の事件が警察官のアパートを狙った爆破であった場合、今後警察官でさえ身の危険を呈してまで裁判で証言しようという人もいなくなる可能性もあります。
実際にヨーテボリ市(スウェーデン)には「沈黙の文化」があり、現在地方自治体の職員がギャングに怯え、ギャング犯罪に関して上司に報告しない状況となっています。
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今後、警察官までもがギャングに怯え証言をしなくなると、ラテンアメリカの国々のように国家がギャングに強い影響を受ける事態にもなりかね、民主主義の根幹を脅かす事態にもなりかねません。
現在スウェーデン国内で広がるギャング等の組織犯罪に対し、スウェーデン政府はこうした来年の予算に250億クローナ(約3,194億円)を投じると発表しています。
また次の選挙では、増加する凶悪犯罪(拳銃事件、爆弾事件、ギャング犯罪など)が争点になるとも言われています。
www.svt.se
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しかし今回の事件がギャングによる爆弾事件でないにしろ爆発事故にしろ、市内中心部で数百人が避難を強いられ、6人が重症となる大惨事となっています。
一般的な日本人のイメージとしてスウェーデンは平和で治安のよいイメージもあるかもしれません。
しかし近年のスウェーデンは拳銃事件、爆弾事件、性犯罪など凶悪犯罪が年々増加し、アメリカのような治安状況になっていきているのです。
もしこれがギャングによる警察官のアパート襲撃が目的であった場合、スウェーデンの民主主義の根幹を揺るがす事件となるかもしれません。
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