COP26での2030年までの各国二酸化炭素排出削減目標
現在地球温暖化が世界で大きな問題となっています。
そのため10月31日に始まった国連気候変動枠組条約第26回締約国会議 (COP26) では、温室効果ガスである二酸化炭素排出を減らすため気温上昇を産業革命以前と比べて1.5度に抑制するとの目標を確認し、2030年までに世界の温室効果ガスの排出量を2010年対比で45%削減し、今世紀半ばにはネット・ゼロにする目標が再認識されました。
日本は2030年目標として2013年度と比べ46%削減とし、アメリカは2005年比で50 ~ 52%減、中国は二酸化炭素排出量のピークを2030年より前にすることを目指し、GDP当たり二酸化炭素排出量を2005年比で65%削減としました。
スウェーデンもEU目標と同様、1990年比で少なくとも55%削減としています。
しかし現実問題として各国にとって二酸化炭素排出削減は容易なものではありません。
10月21日のイギリス公共放送BBCによれば、サウジアラビアや日本、オーストラリアなどが、化石燃料からの急速な脱却の必要性を控えめに評価するよう国連に求めていると報じられ、急激な化石燃料使用削減は避けるべきだという声も上がっています。
また東欧諸国を中心とした国々は、国連の気候目標を達成するために原子力が果たす役割について、もっと積極的に記載すべきだと主張しているとあります。
東欧諸国を中心とした国々は、国連の気候目標を達成するために原子力が果たす役割について、もっと積極的に記載すべきだと主張している。
インドはさらに踏み込んで、「ほとんどすべての章に原子力に対する偏見が含まれている」と主張。原子力は「確立された技術」であり、「一部の国を除いて、政治的な後ろ盾がある」としている。
チェコ、ポーランド、スロヴァキアは、原子力は国連が掲げる持続可能な開発目標17項目のうち1項目にしかポジティブに働かないとする報告書を批判している。3カ国は、原子力は国連の開発目標のほとんどにおいて、ポジティブな役割を果たせると主張している。
www.bbc.com
各国とも2030年目標に向けた二酸化炭素排出削減を試みていますが、現実的に容易ではないようで、その実現に向け原子力発電に依存する実態もあることがわかります。
11月8日のNHKスペシャル『グレート・リセット ~脱炭素社会 最前線を追う~』ではフランスでの二酸化炭素排出削減に向け社会インフラの改革が進められ環境対策が進む姿が報じられています。しかし反面、フランスはエネルギーの大半を原子力発電に依存していることも述べられています。
www.nhk.jp
各国における発電量における原子力発電の割合は、2021年3月の一般社団法人 日本原子力産業協会によれば、フランスが70.6%、スロバキア53.9%、ウクライナ53.9%、スウェーデンも34%であり、日本の7.5%と比較するとヨーロッパを含め各国ともとても高い原子力発電への依存であることがわかります。
世界各国ともに自然エネルギーによる発電だけでは二酸化炭素排出削減目標が達成されずらく、現実問題として今も原子力発電に依存する必要のあることもわかります。
一般社団法人 日本原子力産業協会『2020年の主な世界の原子力発電開発動向』2021年3月
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2021/03/world_nuclear_development2020.pdf
核廃棄物の最終処分に関するスウェーデン政府の発表
原子力発電は二酸化炭素を排出しなく地球温暖化とはならないエネルギーではありますが、放射能汚染という別の問題も含んでいます。
実際に日本では福島第一原発事故や旧ソ連のチェルノブイリ原発事故のような原発事故も起きています。また原発は事故による放射能汚染だけではなく、原発から作り出される核廃棄物の処分も大きな問題となります。
こうした核のゴミは「トイレなきマンション」とも呼ばれ、いまだに多くの国々では核廃棄物の最終処分方法が決定されないままです。
核廃棄物の最終処理問題はスウェーデンも例外ではありません。
スウェーデンエネルギー庁によると、2020年のスウェーデンの発電量のシェアでは風力発電のシェアは総発電量の11%から17%に増加し、水力発電は前年度と比較して10.2パーセントの増加していますが、総発電量の30%が今も原子力発電で補われています。
日本の7.5%(2019年)と比べてもスウェーデンにおける原子力発電への依存度はかなり高いことがわかります。
そのためスウェーデンでも核廃棄物の最終処理は長い間大きな問題となっています。
kon-51.hatenablog.com
kon-51.hatenablog.com
12月1日のスウェーデン公共テレビSVTによると、過去には放射性廃棄物を含む樽がアイルランド沖の海に投棄されており、核燃料の貯蔵方法について長い間議論が続いていした。
1976年には、エストハンマル市が最終処分場に適した場所として言われていました。
しかし長らく話が進まず、スウェーデンの核燃料管理(SKB)がエストハンマル市フォースマーク地区に最終処分場設置を許可申請したのは2011年となりました。
2018年にスウェーデン放射線安全局は申請を承認したのでした。
ただ土地と環境の裁判所は、核廃棄物保存の銅製容器の安全性に規制を設け、銅容器がどれだけの年月の耐久性があるかという問題が繰り返されていました。
2020年、エストハンマル市はフォースマーク地区の最終処分場に「はい」と答えましたが、2021年夏になってもスウェーデン政府は最終的な核廃棄物最終処分の決定を出すことはできなかったのです。
しかしマグダレナ・アンデション新総理大臣のもとで任命された、アンニカ・ストランドヘル環境大臣は、スウェーデン公共テレビSVTの中で、これまで長い間論争となっている核廃棄物の最終処分について決定を下す準備ができていると述べたのでした。
アンニカ・ストランドヘル環境大臣は、
うまくいけば、数日以内、来週には廃棄物の最終処分の決定がされる
と発言したのでした。
世界では最終処分施設が決定され建設開始されているのはフィンランドのみです。
フィンランドではオルキルオト地域ですでに最終処分施設の建設が開始されています。アメリカではユッカマウンテンで最終処分施設が選定されたものの、その後安全審査が長期にわたり中断中となっています。
スウェーデン政府が核廃棄物の最終処理場の決定を下せば、北欧2国が世界でも早く世界で2番目の最終処理場の決定したこととなります。
フィンランド34.7%(2019年)、スウェーデン34%(2019年)と、日本7.5%(2019年)と比べると原子力発電依存の高い国であります。
そのため早急に核廃棄物処理問題を解決して2030年の二酸化炭素排出削減目標に達成していく必要があるのかもしれません。
www.enecho.meti.go.jp
mainichi.jp
リンク