まずリストラ、コスト重視型スウェーデン企業
スウェーデンでは今回のコロナ危機だけではなく、常日頃から少しでも企業は経営難となれば、リストラを避けて経営を見直すよりも真っ先に実行されるのは従業員のリストラがおこなわれます。今回のコロナ危機下でも実際に真っ先に従業員のリストラが実行されています。
それでは現在のコロナ危機下で国民には政府から手厚い保護はあるのでしょうか。現在のところスウェーデンでは国民を守るための具体的なコロナ感染拡大防止規制もなく、日本やアメリカのような国民への支給金もありません。
ただコロナ危機が直面し政府が3月4日に真っ先に実行した政策は、国民を守る政策ではなく企業救済の法律制定でした。
今回のコロナ危機を通しても、政府が国民救済よりも企業救済を第一に考えていることがよくわかります。また企業も企業救済にためであれば従業員の解雇をためらいません。
こうした話を聞き、欧米の雇用形態と日本の終身雇用とでは雇用形態が違うから、スウェーデン人も納得していると考える方もいるかもしれません。
しかし2015年の公共ラジオSRで、スウェーデン技術者労働組合のトーマス・ビルドバーグ氏は
こうしたエリクソンのリストラは会社の危機ではなくただの長期的戦略である。会社は資金を新しい投資に移動させたいだけなのだ。
我々は平均すると約2年ごとに大きなリストラの通知を受ける。しかしリストラではなく他の手段もあるはずだ。
これからも労働組合は会社と交渉を続けていく。そして会社は何度も大きなリストラをしないことが重要であり、社員のスキルを向上させることに焦点を当てるべきだ
と語っています。
実際にこうした頻発するリストラが起きると従業員の士気は大きく低下します。中には病気になったり、会社に来なくなる人さえでてきます。スウェーデン人や日本人に変わりはなく、みんな人間であるため解雇通知を受けショックを受けない人などはいません。
多くの日本人はスウェーデンが社会民主主義と呼ばれ、社会主義的な民主・資本主義であるとされ、社会主義と民主・資本主義のバランスがとれていると考えているのではないでしょうか?
しかし実際の起きた事実や報道内容を照らし合わせると、スウェーデンは社会主義が都合よければ社会主義を唱え、資本主義が都合よければ資本主義を唱えている日和見主義であります。
大量のリストラを行うときは資本主義、高額な課税をするときは社会主義的に平等と都合によりその主義を使い分けています。
スウェーデンは平等・人道主義を唱え公平で国民を守る人道的なイメージが強いかもしれません。
しかし2019年4月14日のニューズウィークによれば、国民が社会主義の基盤である治安や教育、高齢者介護などの公共サービスに不満を募らせている中、2019年に政府は70万クローナ(約840万円)を超える、富裕者層へ課さられていた5%の税金を廃止する、とても資本主義的な政策決定をしました。
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現在のコロナ危機下、政府は企業保護に力を入れていますが、具体的な国民の生命・健康保護対策はいまだなく、企業も経営難となれば社員を守らず真っ先にリストラの実行をしている実態もあります。
社会民主主義とよばれ社会主義的で平等のイメージの強いスウェーデンではありますが、政府や企業は何よりもコストを重視するという資本主義的な面もあるのです。