
環境問題: 全プラスチックのリサイクル率は10%のみ
現在、環境問題が世界で大きな問題となっています。その問題の1つであるプラスチックごみは、腐敗することがなく自然へ戻らず、海の中で浮遊するマイクロごみにもなり生態系へ大きな影響も与えてしまいます。
スウェーデンではプラスチックの分別はもちろん、ビンや缶のゴミの分別はしっかりとされています。プラスチック製品を使わないためビニール袋が有料であることはもちろんのこと、最近ではEU規制もありこれまでプラスチックであった飲み物の容器もプラスチック製から紙製へと変わってきています。
ただ11月5日のスウェーデン公共テレビによれば、スウェーデンで全プラスチックのうちわずか10パーセントのみがリサイクルされるのみと報じられています。
記事では次のように記されています。
ゴミの分別が増しているにもかかわらず、ゴミには多くのプラスチックが含まれています。合計すると、全てのプラスチックの10パーセントだけがリサイクルされます。地域熱供給プラントでは、多くの燃焼が発生し化石排出物が排出されます。
私たちスウェーデン人は、気候やリサイクルに関しかなり良くなっています。しかし、プラスチックは悲しみの子です。すべての新聞の75%、返品缶の80%、ガラス瓶の90%がリサイクルされています。しかし全プラスチックの約10パーセントのみがリサイクルされているにすぎません。
またプラスチックの使用も増えています。スウェーデン環境保護庁の最新の計算では、年間160万トン、7年間で30万トンの増加です。
プラスチックは軽量であり安価で多くの事に適していますが、製造と焼却の両方が気候に問題を与えます。
とスウェーデン環境保護庁のプラスチックフロー専門家であるオーサ・ステンマーク氏は述べています。
プラスチックが燃えると気候問題の原因
ごみに含まれるプラスチックの量が増えると、地域熱供給プラントは国内で最大の排出源の1つになってしまいます。
多くの地域熱供給プラントは石油と石炭の使用をやめて、代わりにバイオ燃料とゴミ焼却をしています。これにはリンシェーピング市にある(廃棄物リサイクル業者の)ゲールスタッズベルケンが含まれていますが、過去7年間において排出量が増加しています。その(排出量増加の)説明としてはプラスチック(焼却)のためです。
ストックホルム・エクセルギは、国内最大のゴミ焼却施設であり、年間100万トンの廃棄物を受け入れています。その重量の18%はプラスチックによるものです。
これはごみの炭素含有量の40%がプラスチックに由来することを意味します、
とCEOのアンダーシユ・エルゲルド氏は語っています。
ゴミの焼却により合計で260万トンの温室効果ガスを排出し、(鉄鋼加工企業の)SSABに次ぎ国内最大の産業廃棄物の埋め立てを行っています。(スウェーデン最大の建材会社の)セメントや(石油会社の)プリームのような巨大企業よりも多いです。
ゴミ分別を増やし使用量を減らす
プラスチック包装の約30パーセントが分別されています。しかしこの数字は少し誤解を招きます。一般世帯においては18パーセントしか分別されていません。産業界においては少し良くなっています。しかし分別されたプラスチックでさえも、広範囲にリサイクルされるわけではありません。
多くの黒いプラスチックやさまざまなラミネートはリサイクルが困難でを排出します。
これには製造業者が大きな責任を負っていますが、スウェーデン環境保護庁はさらに多くの当事者が改善をしていくべきだと考えています。
製造業者はリサイクルしやすい製品を作る必要があり、業界や家庭は分別が上手くなる必要があります。特にプラスチックの使用量を減らす必要があります
とオーサ・ステンマーク氏は語っています。
www.svt.se
日本と比べスウェーデンではプラスチック製品が少ないです。近年はプラスチック製品から紙の製品に代わっおり、プラスチック製品を使用しないことが日常生活でも目にみえてわかります。
スウェーデンではペットボトルや缶の飲み物を購入した際、あらかじめリサイクル料金が上乗せされ販売されています。そのため使用後にリサイクルする人も多く、またリサイクル機械も多くのスーパーに設置されていて簡単に返金を受けることが可能で、日本よりも気軽にリサイクルができます。
ただ日本も30年、40年前はこれほどペットボトルも普及しておらずガラス瓶の回収も多くありました。そして酒屋にガラス瓶を持っていけば10円返金されるなど今よりリサイクルされていたはずです。買い物の際も自前の買い物袋をもち店へ行き、プラスチック製の袋もそれほど普及していませんでした。
しかしいつの間にかコンビニやスーパーなどで手軽に利用でき安価なプラスチック製品が店内にあふれるようになってしまいました。
日本の誇るべき「もったいない(Mottainai)」という言葉
日本では「もったいない」という文化が根付いている国であり、モノを無駄にし粗末にしないよう家庭や学校でも教育されてきたはずです。
「もったいない」という単語の意味は、日本だけに存在し外国語に訳すことができません。それが今、世界共通語として普及し始めています。
2017年の東洋経済の記事によれば、
2004年に環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア出身のワンガリ・マータイさん。この方が環境を守る世界共通語として「MOTTAINAI(もったいない)」を広めることを提唱し、国内外で「もったいない」という言葉が注目を浴びたことは、多くの方がご存知だと思います。
その後、地球環境に負担をかけないライフスタイルを通して、持続可能な循環型社会の構築を目指す活動として「MOTTAINAIキャンペーン」がスタートしました。そのキャンペーンの説明によれば、マータイさんは、日本語の「もったいない」という言葉を知り、この言葉の意味に該当する別の言葉を他言語にも探したそうです。しかし、「3R+Respect」という精神のすべてを網羅する言葉を、「もったいない」以外には見つけることはできなかったそうです。
「3R」とは、「Reduce(ゴミ削減)」「Reuse(再利用)」「Recycle(再資源化)」のことを指し、最後の「Respect」はかけがえのない地球資源に対する尊敬の念のことです。マータイさんは、これらをすべて包括するのが「もったいない」という言葉だと定義されたのです。こうして日本語が大切な精神として世界から注目を受けたことはとても誇らしいことだと思います。
toyokeizai.net
しかし経済成長という名のもと、安いプラスチック製品の利用が増え、リサイクルもあまりされなくなってきました。
スウェーデンでは一般ゴミに関して日本より進んでいると感じますが、SVTの記事でも記されているように、それでも全プラスチックの10%しか実質リサイクルされていないとのことです。
スウェーデン環境保護庁オーサ・ステンマーク氏も語るように、ゴミの分別をしリサイクル率を上げ、さらにプラスチックの使用量も減らしていく必要が、地球の環境破壊を防ぐためにもスウェーデンや日本のみならず世界中で必要になるはずです。
ただこの地球規模の環境問題を根本的に解決するためには、現在の消費社会を生み出す大きな要因である、経済構造自体の抜本的な見直しが必要になるはずです。
目先だけの利益を追い、我々の世代だけが豊かに暮らせればよいような経済成長第一主義の現在の経済構造においては、将来の子供たちが健康で安心して暮らせる持続可能な地球環境を残すの事は難しくなるのではないでしょうか?
eco-tatsujin.jp
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