スウェーデン 福祉大国の深層 続報!

『スウェーデン 福祉大国の深層』を水曜社より商業出版(政府刊行物)して頂けました。読者の方からの要望を頂きスウェーデンの時事ニュースを主な内容とし、日本にも役立ち社会貢献にもつながるようなブログを記させて頂きます。

産学官の国家構造からみたコロナ政策(前半)

本日のスウェーデン感染者状況

本日におけるスウェーデンの感染者総数は22,721人、死亡者2,769人、100万人あたりで感染者は2,250人、死亡者は274人になっています。 

日本の感染者数が14,877人、死亡者487人、100万人あたりで感染者は118人、死亡者は4人です。 

スウェーデンにおける人口あたりの死亡数は68倍以上も日本より高いことになります。  

2度目コロナ検査なく広がった高齢者施設での感染

4月28日の新聞ダーゲンニーヘタによると、80代の高齢者がコロナ感染の疑いがあり病院でコロナ検査が実施されました。すると陽性であったため病院で48時間待機しましたが、その後症状の悪化がみられなかったため再度コロナ検査することなく、高齢者施設に戻されました。しかしその後にコロナ症状が現れたため、高齢者施設でコロナ検査をしたところ陽性と判明したのです。そのため高齢者施設で他の老高齢者にもコロナ感染が広がった恐れがあるとき報じられています。 このニュースは隣国フィンランドの新聞yleでも報じられるものでした。

 

4月25日にレナ・ハングレン社会大臣がスウェーデンのコロナ高齢者対策は失敗だったと発表したように、現在のスウェーデンでは高齢者へのコロナ感染は非常に拡大し多くの高齢者が亡くなる状況となっています。

www.dn.seyle.fi 

医療・介護の現場

4月14日のNHKクローズアップ現代+によれば、日本赤十字社医療センターが東京都から現在の病床を1.5倍に増やしてほしいと要請が入り、要請に応えるため、病床をどこから捻出し、スタッフをどの科から集めるかなど検討をしているとのことです。そして終わりの見えない戦いが続く中、医療スタッフの負担はピークに達しており、日本赤十字社医療センター 川上潤子看護部長は、

「『自分たちが もしかして』という不安が拭いきれないところが絶対にある。『本当にこのまま家族と一緒に生活する家に帰っていいんだろうか』とか、気持ちの面では、かなり皆さん疲れているんじゃないかな。」

と語られています。

 
日本赤十字社医療センター メンタルヘルス科 秋山恵子臨床心理士も、

「ちょっとつついたら割れちゃいそうな風船になっている。はね上がるように。」

と医療スタッフ全体の心の負担がこの1週間で急激に高まっていると語っています。

 秋山恵子臨床心理士自身も、

「私もこんなに自分でもストレスを感じたことない。はちきれそうだけど、ぐっと持ちこたえようとしている。世の中の方々にも受け止めて欲しいし、応援してほしい。避けないでって思います。」

 と話されています。


医療現場の人たちはかつてないほどにのストレスの中、必死で医療活動をしていると報道されていす。

www.nhk.or.jp 

また知人であるスウェーデン人の介護士も、「こうしたコロナ感染が広がる中でも公共サービスで働く介護士であるため休暇はとれず、自分が感染するかもしれないという不安の中働いている」と語ってくれました。日本やスウェーデンを含めどこの国でも現場の人たちは、自身が感染する不安の中、必死に治療や介護活動をされています。  

政府と公衆衛生庁の責任

スウェーデンにおいて高齢者施設での感染が拡大している理由の1つに、政府や公衆衛生庁をトップとする医療機関組織の戦略、さらにいうならば国の構造に起因しているとも考えられます。 

4月28日の新聞ダーゲンニーヘタで報道された2度目のコロナ検査を実施せずに広がった高齢者施設での感染拡大も、恐らく現場の方たちは本当に48時間たてば再検査実施せずに患者を施設へ帰してよいのか疑念を感じていたはずです。しかし医師も看護士もみな組織の一員であり病院の指示に従う必要があります。 また病院も当局の定めた規定に従う必要があり、48時間したら再検査の必用ないと当局により定められていればそれに従う必要があるはずです。このように病院も大きな医療組織の1つに過ぎません。

 

多くの国々ではコロナ戦略を指揮しているのは政府です。しかし現在のコロナ危機対応を主導しているのは公衆衛生庁となります。疫学者アンダーシュ・テグネル氏は、そのリーダーとして毎日のようにテレビに出演し、スウェーデンのコロナ対策戦略に対して非難を受けています。 

 

しかし政府には責任がないのでしょうか? スウェーデンでその責任は特殊でありますが、法律によれば政府にも責任があります。 3月30日のメディア媒体ザ・ローカルによれば、ウプサラ大学の政治学科のベンニッチ・ヴョ-マン教授は、実施されたコロナ措置への最終的な責任と説明責任は、政府がもっていることは明白であると語っています。

 

The Local『Who’s actually responsible for Sweden’s coronavirus strategy?』30 March 2020

https://www.thelocal.se/20200330/whos-actually-in-charge-of-swedens-coronavirus-strategy

 

病院や高齢者施設は、公衆衛生庁や政府の決定に従い定められた規定従い、現場の方々も当局からの指示に従っているだけだと考えられます。そのため現在高齢者施設における感染拡大は、こうした戦略を実施している政府や公衆衛生庁など当局に責任があると考えられます。では公衆衛生庁や政府はなぜこうした政策をとるのでしょうか?