
スウェーデン「医療状況:ホームドクター制度と長期の診察・手術待ち(8年以上も)の現状」
スウェーデンではホームドクター制を導入しています。
ホームドクター制度では病気になったら、まず街にあるすべての病気を診察するホームドクターにみてもらう必要があります。
もしホームドクターが診断できないと判断した場合、市内の総合病院に紹介状を書いてもらい総合病院の専門医にみてもらうことになるのです。
ホームドクター制度では町医者であるホームドクターが症状の振り分けを行い、
ホームドクターでは治療できない病気だけを総合病院で行うため、
人件費を抑えられ医療費の削減ができるため、日本でも導入が検討されている医療制度となっています。
医療の現状1: 長い診察待ち期間
しかしスウェーデンの場合、現実、ホームドクターに診察してもらうのにも長い診察待ち期間を要する場合がもあります。
著書 スウェーデン 福祉大国の深層では詳細を記していますが、
直接医療機関に行き診察してもらえるドロップインを受けている街の医者ならばいいのですが、
診療所では予約制しか受けていないところが多くあります。
中にはホームドクターに診察してもらうのに1ヶ月以上待つ必要のあるところさえあります。
医療の現状2:幅広すぎる医療知識必要性で、なかなか病気が治らない
またホームドクター制度は、ホームドクターが内科、皮膚科、外科、呼吸器科、精神科などすべての診断をするため、
ホームドクターには幅広い知識が要求されます。
しかし現実的には、それほど幅広い医療知識をもつホームドクターはおらず、そのためなかなか病気が治らないケースが多いのです。
そのため風邪程度では医者へいかない人は多いです。
(スウェーデンの医療は無料ではありません。1回の診察で100クローナ(約1200円)ほどかかります)
また最近ホームドクターには、移民系のホームドクター(イラン、インド、中国、アフリカ系)も増えてきています。
医療の現状3:紹介状をなかなか書いてもらえない。医療費削減
もしホームドクターが診断できなければ専門医に紹介状を書いてもらえるのが基本ではあるのですが、
現実的にはなかなか紹介状を書いてもらうことができません。
その理由をスウェーデンで働く医師に尋ねると、医療費削減のためだと話していました。
医療の現実4:専門医診察までの長期の待機期間
もし紹介状を書いてもらえたとしても、総合病院で専門医に診察してもらうのにも非常に時間がかかります。
早くて2, 3週間、普通は2, 3ヶ月、長いと数年まつ必要があります。
実際に私は総合病院の専門科受診で4年待たされたことがあります。
医療の現実5:手術までの長い待機期間(8年以上待つ患者あり)
さらに専門医に診察を受け手術となっても非常に長い時間またされます。
この現在の医療状況を記したのが、前回のブログで記した2月10日のヨーテボリ新聞の記事であり、
ヨーテボリ市大学病院の整形外科のみだけで1000人が1年以上手術まちの患者がいて、
中には8年以上待つ患者もいる医療状況となっているのです。
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ホームドクター制度自体が良いか、または良くないかの判断はできませんが、
スウェーデンの現状だけをみると、すぐに診察・治療・手術がされていない現状であるため、
国民の健康にとってプラスに働いているとは考えにくいです。
日本でもホームドクター制度を導入する際には慎重に検討してもらいたいものです。
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