
ロベーン首相:コロナ対策批判と責任への質疑応答(公共テレビSVTより)
10月29日、スウェーデンのコロナ委員会は2回目のコロナ報告を行い、スウェーデン政府のコロナ対策に対して鋭い批判をしました。
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その報告書に対するロベーン首相のコメントが、11月2日の公共テレビSVTに下記のように報じられています。
ステファン・ロベーン首相は、スウェーデンで大規模な(コロナ)検査がどうして遅れたかをコロナ委員会が説明する際に強い言葉を使っていると考えています。
先週、(コロナ)委員会は政府の取り扱いを鋭く批判しました。特に2020年春の最初の(コロナの第1)波の間では(対応が)遅く感染拡大を止められませんでした。
(スウェーデン政府の)準備は標準以下であり、最初の波から大規模なコロナ検査が始まるにも少し時間がかかりました。
検査実施能力を築きあげるまだに非常に長い時間がかかった事実、これを委員会は「クラッシュ」と呼んでいます。
クラッシュ、それは受け入れることだと思います。(ただクラッシュという言葉は)社会全体が崩壊しているように聞こえます-それは真実ではありません。クラッシュは強い言葉だと思います。
とステファン・ロベーン首相は語っています。
また政府は準備が不十分であったと述べました。また高齢者介護には欠点がありました。
委員会は管理者(政府)の失敗の責任者についてまだ回答をしていません。 (その回答は)2月にされます。
ただパンデミックが猛威を振るう間、(実際のコロナ検査を実施せず)代わりに、誰が責任を負い、誰が大規模なコロナ検査に資金を出すのか話し合っていた自治体や当局などの多くの関係者を批判しています。
政府として私たちの責任は、リソース(資金)があることを保証することです。政府はコロナ検査を行っていません。コロナ検査は自治体の責任です。
とロベーン首相は語っています。
彼(ロベーン首相)は、必要に応じ政府がプロセスをスピードアップする責任があることを認めています。
しかし我々は(コロナ感染の)最初の日から、非常に早い段階で医療介護に関してあなたがた(自治体)がする必要のあることをしなさい、私たち(政府)は支払うと言っていました。
と彼(ロベーン首相)は述べています。
www.svt.se
ロベーン首相のこの発言を聞くと、政府は資金は提供するからあとは自治体がコロナ検査や対策は自治体の責任であり、政府が主導となりコロナ感染防止に臨もうと取り組んでいたようには思えない気もしてしまいます。
スウェーデンと日本の問題解決方法の違い
このロベーン首相の発言の中で「リソース」という言葉がでてきていることがわかります。
政府として私たちの責任は、リソース(資金)があることを保証することです。政府はコロナ検査を行っていません。コロナ検査は自治体の責任です。
日本において何か問題解決の方法として「リソース(資金)」がまず先に話されることはあまりないはずです。ただスウェーデンではしばし耳にします。
それというのは一般的に日本とスウェーデン(欧米諸国)では基本的な効率の考え方が異なっているためです。
一般的に日本では具体的な解決策を検討し、その解決策を実行するのに対してどのように予算を割り当てるか検討されるはずです。
日本の問題解決方法:
解決策の検討=>予算(リソース)の割り当て
しかしスウェーデンの問題解決方法の特徴として、まず予算の割り当てが議論となり、その予算割り当て後に関係組織が自身で対策を練る傾向があります。
スウェーデンの問題解決方法:
予算(リソース)の割り当て=>解決策の検討
スウェーデン 福祉大国の深層の中で紹介しましたが、日本では一般的にお客目線からの視点の効率である、「フロー・エフィシェンシー」が重要視されていますが、欧米ではコスト視点の効率、「リソース・エフィシェンシー」が重要視されており、基本的な効率に対する考え方が違うのです。
その為、スウェーデン政府としてはリソース(資金)を出すのが政府の責任であり、実質のコロナ対策は自治体にゆだねて責任は自治体にあると述べています。
コスト視点の「リソース・エフィシェンシー」としてはよかったのかもしれません。しかし今回のコロナ感染拡大防止は急を有する事態であり、お客様目線(国民の健康・生命第一)の「フロー・エフィシェンシー」が求められました。
しかし「リソース・エフィシェンシー」重視の考えであるスウェーデンでは、迅速な具体的な対策実施がなかなか進まなかったと考えられるのです。
そのためコロナ委員会が指摘するようにコロナ第一波で多くの高齢者が死亡する事態を生んでしまったのかもしれません。
(日本と欧米との効率に対する考え方の違いは、スウェーデン 福祉大国の深層で詳しく記していますので、ご興味のある方はお読みください)
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