
6月中旬にスウェーデン中部ハーグフォシュ市にあるプラテラHVBと呼ばれる児童養護施設で、5歳になる男の子ジョン・ウォルター君が、児童養護施設の近くの川で溺死体で発見される事件がありました。
6月6日の公共テレビSVTによれば、スウェーデンの健康管理検査機関(Ivo)により検査されているほとんどのHVB(児童養護施設)は大きな問題があったりすることはありません。しかし18のHVB(児童養護施設)は深刻な違法行為をしたとし、健康管理検査機関(Ivo)よりリストアップされ厳しい批判を受けていました。
健康管理検査機関Ivoからリストアップされた問題のある18のHVBの1つに、ハーグフォシュ市にあるのプラテラHVBがあったのです。

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18の児童養護施設(HVB)が違法行為でIVOに指摘
6月23日のSVTによれば、亡くなった5歳の子ジョン・ウォルター君は、自閉症とADHD(注意欠如・多動症)を持っていたため、ハーグフォシュ市にあるのプラテラHVBに預けられていました。
しかしジョン・ウォルター君の父親によるとジョン・ウォルター君は探検好きであり、しばし施設からいなくなっていました。そのため両親はHVBの安全性についてプラテラHVBに何度も問い尋ねていました。また繰り返し深刻な違法行為が行われ、厳しい批判を受け、18のHVBの1つリストアップされるプラテラHVBに抗議も行っていました。
しかし自治体はHVBの施設は安全であると繰り返し述べていたのでした。
そうした中、5歳の子ジョン・ウォルター君がプラテラHVBの近くの川で溺死体となって発見される事件が起きたのです。
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5歳児溺死に児童養護施設の従業員2人へ犯罪の疑い
9月29日のSVTの記事によれば、5歳の子ジョン・ウォルター君が近くの川で溺死した事件に関し、プラテラHVBの2人の従業員が犯罪に関与している可能性があることを報じています。
検察官のステファン・ウェスバーグ氏によると、
他人(ジョン・ウォルター君)の死亡に関与している場合には、この2人に通知がされます。
と述べています。
しかし検察官のステファン・ウェスバーグ氏はこの2人が容疑者として取り調べされるまでは詳細を話したくはないそうです。
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プラテラHVBのCEOはグループ企業の最高責任者へ昇進
こうして6月中旬にスウェーデン中部ハーグフォシュ市にあるプラテラHVBと呼ばれる児童養護施設で、5歳になる男の子ジョン・ウォルター君が、児童養護施設の近くの川で溺死体で発見される事件は、事故ではなく児童養護施設の従業員2人による犯罪である可能性もでてきています。
そして5歳のジョン・ウォルター君の死後、プラテラHVBを経営するヒューマナグループはハーグフォシュ市にある2つのHVBを閉鎖することにしました。
しかし10月11日の公共テレビSVTによれば、プラテラHVBのCEOはヒューマナグループの新しい最高責任者へ昇進したと報じられています。
これに対しジョン・ウォルター君の父親は、
これは信じられないほどのスキャンダルです。
と語っています。
今年6月にジョン・ウォルター君の溺死が発見される以前から、このプラテラHVBはスウェーデンの健康管理検査機関Ivoから数年間厳しい批判を受けていました。
またプラテラHVBのCEOのヨハンナ・ラスタッド氏は、ジョン・ウォルター君が亡くなる1か月前のインタビューで、施設の欠点を修正できなかったのは失敗であったと認めました。
プラテラHVBのCEOのヨハンナ・ラスタッド氏は、
完璧な状態にまで改善できなかったのは失敗と述べなければなりません。
と語っていました。
しかしその後にジョン・ウォルター君が死亡し約70人の職員が仕事を失いました。
さらに職員の2人がジョン・ウォルター君の死亡への犯罪の疑いもでてきているのです。
しかし、プラテラHVBのCEOのヨハンナ・ラスタッド氏は、こうした欠陥があったにもかかわらず昇進したのでした。
ジョン・ウォルター君の父親はプラテラHVBのCEOは罰せられるべきであり、昇進されるべきではないと信じています。
ヨハンナ・ラスタッド氏のリーダーシップの下、プラテラHVBは非常に大きな利益を上げました。直近の会計年度である2020年に、プラテラHVBは所有者のヒューマナグループに2900万クローナ(約3億7500万円)の利益をもたらしたのでした。これは売上の39%に相当します。
ジョン・ウォルター君の父ハンス・エリック・ショーホルム氏は
Ivoが何度も指摘していた問題解決に投資がされていたら、安全面は向上していたはずですが、(プラテラHVBの)ビジネスは良くならなかったでしょう。
と語っています。
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民営化によるコスト重視福祉
スウェーデン 福祉大国の深層でも記しましたが、1992年の「エーデル改革(高齢者介護改革)」以降に高齢者福祉が民営化され、高齢者介護の業務は県から地方自治体へ移され民間企業への業務の委託が広まりました。
そして民営化によるコスト重視により、サービスの低下を招き人道的に許されないような事件も、数多く起きているのです。
こうした民営化によるコスト重視は高齢者施設だけではなく、児童養護施設でも起きており、5歳の子供を死亡にまで追い込む事件も生み出しているのです。
こうしたコスト重視の福祉政策が現在のスウェーデンには浸透し、高齢者コロナ対策の失敗を含め多くの問題を引き起こしていると考えられるのです。
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