
高齢者福祉詐欺:『ホームサービスマフィア』66の在宅介護会社が不正行為
2020年12月15日にスウェーデン政府が任命したコロナ委員会により、スウェーデンの高齢者コロナ対策が失敗であったと正式報告が出されました。
そしてその報告書の中で、政府は高齢者施設の脆弱性を認識していたにもかかわらず具体策を施さなかった政府に最終責任があると記されています。
このコロナ委員会の報告書にもあるように、コロナ以前から高齢者施設の脆弱性はスウェーデンでは大きな問題となっていました。
そうした高齢者福祉施設での問題を示す事例が、9月8日のスウェーデン公共テレビSVTで記されています。
SVTの記事によると、2013年以降に少なくとも66の在宅介護会社が不正行為により自治体から追放されていると記されているのです。
おうした在宅介護会社は介護勤務時間登録を操作し、実際に行った高齢者介護よりも長い勤務時間を申請し、多くの支払いを自治体より受けていたとあります。
また一部の在宅介護会社は規則違反を犯し、介護スタッフを自分の親戚の介護のために働かせていたのです。
さらに決められた介護訓練を受けた介護スタッフ数の割合要件を偽るため、偽の雇用も行ていたとあります。
その為事態が判明した27の自治体が、こうした不正行為を行っていた在宅介護会社との契約を終結、また今後終了することになったのです。
それにも関わらず、詐欺によりある自治体で追放された在宅介護会社の中には、別の自治体で事業を継続している会社もあるとのことです。
www.svt.se
9月5日の労働組合新聞アルベーテットにはさらに詳細の記事が記されています。
その記事によれば、ストックホルム市はスンドビュベリ地区の高齢者介護サービスを提供する企業リアル・オムスログが不正行為を行っているのではないかと疑念を抱いていました。
その為2人の自治体職員が実際にこの会社のスタッフが高齢者サービスを提供しているのかを確認するため、高齢者アパートの前に立ち偵察をしていると記されています。
自治体職員は介護スタッフが勤務時の間、介護サービスを受ける高齢者アパートの門の近くに立ち偵察を行ってましたが、その間誰も高齢者アパートに出入りしていず、ドアベルを鳴らすも誰も出てこずアパートは静かであったと述べています。
ようするに介護スタッフは、高齢者アパートを介護のために訪れもせず、自治体に介護サービス料を申請していたのです。
こうした不正行為が判明し、自治体は2017年から2018年の間、8社の介護サービス企業を自治体から追放したとあります。
arbetet.seomni.se
また2013年に地方自治体の労働者新聞であるコミューナル・アルベターレンは、ストックホルム市にあるセーデルテリエ地区における介護サービスの大きな詐欺事件を突き止めました。
それにより24人が詐欺罪で有罪判決を受け、被告人らは1年から4年の懲役、7年の禁固刑の求刑を受けたとのことです。
しかし記事によればその後も不正事件は続いているとのことです。
ka.se
2011年: 衝撃的な福祉介護不祥事「カレマスキャンダル」
スウェーデン 福祉大国の深層では、2011年に「カレマスキャンダル」と呼ばれる、スウェーデンの社会に衝撃を走らせた高齢者介護施設での事件について記しました。
このスキャンダルはベンチャー企業であるカレマは投資家の収益重視の運営を行い、サービスの質を下げてまでコスト削減を行っていました。
そのため人件費節約のために、夜は入所者をベッドに縛り付けたり、オムツ交換も一定の重量になるまでしてはいけないという指示も出していました。このスキャンダルにより、スウェーデンの高齢者施設での実態が明らかになりました。
kon-51.hatenablog.com
しかし2011年におきたカレマによる高齢者施設でのずさんな実態が判明したにも関わらず、2013年以降に66もの在宅介護会社が自治体から多くの金銭を巻き上げるために詐欺を行っていたことが判明したのです。
こうしたずさんな高齢者福祉サービスの中、2020年にコロナ感染が始まりました。
こうしたスウェーデンにおける高齢者介護サービスの現状を知っていれば、なぜスウェーデンで多くの高齢者がお亡くなりになったのか容易に理解できるのではないでしょうか?
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