スウェーデン 福祉大国の深層 続報!

『スウェーデン 福祉大国の深層』を水曜社より商業出版(政府刊行物)して頂けました。読者の方からの要望を頂きスウェーデンの時事ニュースを主な内容とし、日本にも役立ち社会貢献にもつながるようなブログを記させて頂きます。

スウェーデン「医療問題:緊急治療室に深刻な問題と多額な罰金(ウプサラ大学病院)」

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専門医受診までの長期間待ちの医療状況

日本では病気になれば、近くの診療所や病院へいきすぐに専門医に診察してもらえるのは当然です。

 

しかしスウェーデンは日本の医療制度とは違い、すぐに専門医に見てもらうことはできません。まずボードセントラルと呼ばれる総合医師にみてもらい、その診療後に必要があれば病院などの専門医を紹介してもらう、日本とは異なる医療制度を採用しています。

 

スウェーデン 福祉大国の深層では細かく記しましたが、スウェーデンでは総合医師から専門医を紹介してもらい、紹介から専門医に診察してもらうまでの時間が非常に長くかかります

 

通常時であれば、通常2,3週間診察待ちであることが多いですが、数か月以上待つこともしばしばあります。ときには数年待ちのケースもあります。

 

スウェーデンの市町村議会の統計 によれば、2021年5月において90日以内に専門医に診断してもらえたのは73%のみとレポートされています。

 

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ウプサラ大学病院、救命救急センターの深刻な問題、改善への多額な罰金

こうしたスウェーデンの医療状況ですが、9月30日の公共テレビSVTでは、ウプサラ大学病院の救命救急センターには深刻な問題があることを報じています。

 

記事によると多くの治療場所が不足しており患者の安全が危険にさらされており、大学病院へ現在2,000万クローナ(約2億5,500万円)の罰金が科せられていると報じられています。

 

スウェーデン社会省の健康社会ケア監督組織(Ivo)は、この数年間、大学病院の救急科の問題と患者の安全上のリスクを指摘してきました。

 

特に夏の間は治療場所がなく、この状況は最高潮に達したとIvoは述べています。

 

この大学病院には長い間大変に深刻な問題があります。以前から(大学病院に)いくつか指導を行い、Ivoは大学病院に問題を改善するように要求しました。しかし2021年の夏の間の治療現場の状況は、これまでこの大学病院が経験した中で最悪の状況の1つでした。

とIvoの部門長ペダー・カールソン氏はプレスリリースで述べています。

 

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30の新しい治療場所が必要

Ivoによると、病院がこれまでと同じような勤務体系を続ける場合、治療場所を少なくとも30場所増加する必要があるとのことです。

 

そして9月30日にIvoは2,000万クローナ(約2億5,500万円)の罰金大学病院とウプサラ自治体に課しました

 

Ivoによれば、こうした高額な罰金を科すことは珍しいことであり、

罰金額は、こうした事態が非常に深刻な状況であることに正当化されています。患者の安全を向上させる対策について明確な要件があります。現在、さらに強力な対策を講じる必要な状況にあるのです。

とIVOの部門長ペダー・カールソン氏はプレスリリースで述べています。

 

12月2日までに大学病院は問題を改善し患者のリスクを軽減に努める必要がありますそうでなければ大学病院は罰金の支払いをしなければなりません。


緊急を要する事態

地方議員のマリン・ショーベリ・ホーグレ氏は、30の新しい治療場所を開設する計画がすでにあると語っています。

 

しかし今、私たちはその仕事(治療場所の開設)を急がなければなりません。私たちは、これまで考えていた職員採用を停止計画に変更を加え、治療施設関連の採用計画を除外した

と地方議員のマリン・ショーベリ・ホーグレ氏は語っています。

 

地方議員ショーベリ・ホーグレ氏によると、Ivoと大学病院は長い間議論を重ねてきました。そして救命救急センターへの患者搬送状況を改善する必要がります。これは他の部門に治療場所がないため、代わりに救命救急センターへ搬送されているのです。そしてこの問題は基本的にスタッフ不足の問題が起因しています。

 

大学病院はさらに魅力的な雇用主になる必要がある

と地方議員ショーベリ・ホーグレ氏は語っています。

 

それはどのようになされますか?

1つの例として私たちはすでに、新しい勤務時間への対策を講じています。しかしそれだけでは十分ではないようです

と地方議員ショーベリ・ホーグレ氏は語っています。 

 

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9月30日の公共テレビSVTでは、ウプサラ大学病院の救命救急センターにおける深刻な状況を記しています。ただこれはウプサラ大学病院に限ったことではありません。

 

スウェーデンの病院では専門医に診察してもらうために、通常2,3週間またはそれ以上の期間待たないと医師に診察もしてもらえないのです。そのため急遽専門医に診察してもらいたい場合、大学病院の救命救急センターを訪れるしかないのです。

 

しかし救命救急センターでの待ち時間も非常に長いです。

2017年の公共テレビ放送SVT によれば、救命救急センターを訪れる10人に1人が約7時間以上の待機時間があります。平均待ち時間3時間18分とのことです。また中には12時間以上待ったという人さえいます。

 

現在のスウェーデンの医療事情は日本と大きく異なる状況となっています。そしてスウェーデン医療問題はこの数年で始まった問題ではなく、長い間深刻な問題であり多く議論されています。しかし一向に改善されていない状況です。

 

そうしたこと深刻な事態を受け、IVOはウプサラ大学病院に対し多額な罰金を科すことで深刻な問題解決に取り組むよう促しているのです。

 

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