日本よりすすむデジタル化社会と電子認証バンクID
スウェーデンではデジタル化が日本よりも進み、これまでも多くの新しい金融政策を世界に先駆け導入しています。たとえば2016年頃から日本でも導入されはじめた銀行のワンタイムパスワード認証も、2003年にスウェーデンでは主要銀行が開発した、バンクID(銀行身分証明書)という電子認証アプリがすでに開発されています。
バンクID(銀行身分証明書)とは、スウェーデンで使用される最大の電子識別システムで、スマートフォンユーザーの94%がこのバンクIDを使用しています。
このバンクIDはスウェーデン及びいくつかの北欧の銀行が所有するフィナンスシェルID技術BID(Finansiell ID-Teknik BIDAB)によって管理されているアプリです。
またバンクIDはスウェーデンの個人識別番号(日本のマイナンバーにあたる)を使用し管理されるアプリで、インターネットショッピングや個人間取引、最近は行政・公共サービスでもバンクIDを使い身分証明書の代わりにまでなってきています。
www.bankid.com
年間20万件にもおよぶ電子認証アプリの乗っ取り被害発生
確かにスウェーデンにおいてはインターネットショッピング、行政手続きなど多くのことが、パソコンや携帯などでできるため、若者にとっては大変便利になりました。
しかし反面、この電子認証アプリ「バンクID」のハッキング(乗っ取り犯罪)が多発しています。
7月13日の新聞SvDによると、2020年5月から2021年5月の1年間で、なんと約20万人ものバンクIDのハッキングあったと報じられています。
乗っ取りされたバンクIDによる被害の内訳:
犯人が名前を偽り商品を購入した(67%)
犯人が乗っ取ったバンクIDアカウントから金銭を受け取った(18%)
犯人が銀行IDを乗っ取った(9%)
犯人が名前を偽りローンを借りた(9%)
犯人が被害者に連絡する方法:
電子メール(74%)、電話(31%)、テキストメッセージ(25%)、ソーシャルメディア(19%)、手紙(4%)、物理的な会議で直接(3%)、ビデオ通話(2%)、コンピューターゲーム(1%)
保険会社マイセーフティのレポートによると、バンクIDの乗っ取り犯罪はこの3年間で0%から9%に増加しました。また同社専門家 プラバート氏によると、犯人がバンクID乗っ取りのためハッカーを雇ったり、有用プログラム使用するようになり、犯人のリスクは基本的になく検挙率もほとんどないと述べています。また私たち個人がこの乗っ取り犯罪から守ることはほぼ不可能であると述べています。
www.svd.se
ハッキング犯は基本的に金銭を得ることを目的としています。そして一番多い被害は、名前を偽り他人のバンクIDから商品やサービスを購入することです。
またスウェーデンではバンクIDを使いローンを組むことも可能であるため、被害者の名前でローンを組む犯罪も増えてきています。
さらに専門家プラバート氏によると、最新技術に精通している高齢者が多くないため、高齢者は被害を受けやすいと語っています。そしてこのハッキング犯罪から犯人が得た金銭は、麻薬や武器の密売など、他の重大な犯罪への資金源となることが多いそうです。
2020年5月から2021年5月の1年間で、19万2,000人のスウェーデン人のバンクIDが乗っ取られました。これは1分間に約4回のバンクIDがハッキングされたことを意味しています。年間にすると人口の約2%弱のバンクIDが毎年ハッキング被害を受けていることになるのです。
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日本のマイナンバーにあたる個人識別番号が行政サービスだけでなく、医療福祉、ショッピング、電子身分証明書などいたるところで使用され、個人識別番号とデジタル化が融合しているスウェーデン社会です。
もちろんデジタル化により便利となります。しかし高齢者には苦労を強いられる社会ともなっています。そして個人情報流出はもちろん、名前を偽り商品を購入、無断でローンを組まれる犯罪まで発生しているのです。さらに犯罪により得られた金銭は麻薬や武器密輸に使用され、スウェーデンの犯罪発生数を増加させる状況にもなっているのです。
このバンクID乗っ取り問題のように、問題が起きてから解決策を考えるのではなく、メリットとデメリットをしっかりと吟味したうえで、将来のどのような社会構築していくか検討していってもらいたいものです。
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